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第十回第十一回
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第三回滑稽俳句協会報年間賞決定!
 
千葉県 菅野あたる
霜柱地価十億を持ち上げる
 受賞の感想
 この句については「『持ち上げる』に『おだてる』の意味あり。霜が溶ければ、『霜の溶け十億の土地暴落か』」。という貴重な注釈を頂戴し、この句の土地の高値の原因や高値の危うさを気付かせていただきました。
ところで私が俳句を作りだした初心のころ「相対性理論のひかり蛍の夜」という句を作って自信満々、句会に臨んだところ、結果は惨敗、句会の先生が「この句は誰のだ?」というから、「私のです」というと、先生がいきなり立ち上がり、両手で大きなバッテンを作ってダメだダメだ!およそ「相対性理論」などという語は俳句にならない!と言われ、それ以後、私はニュートンの句を作った人、ガリレオの句の人などとあらぬ名で知られるようになったことが思い出されます。
「地価」のような経済用語であっても快く受け入れていただけることに滑稽俳句の懐のふかさを感じます。ありがとうございました。
 
 
兵庫県 金澤 健
ふぐ料理毒よりこはき時価の文字
 受賞の感想
 我々の身の回りには、笑いの種、滑稽のネタ≠ェ満ち溢れています。それらを見過ごすことなく書き留めておいて、時間のある時に、五七五で詠んでみる。そのあと、詩としての約束事を外さぬように修正(季語を入れる、切れを作るなど)を加えれば、笑いのある俳句や川柳になったりします。
今回、八木会長に選んで頂いた句もそのような過程を経て作った句で、自分としても気に入っている作の一つです。今回認めて頂いて非常に喜んでおります。皆さんもお店に入って品書きを手にし、句に詠まれているのと似たような経験をされたことがあるのではないでしょうか。
ごくありふれた日常生活に息づく滑稽美≠見逃さず、それを詩として表現し、読者の皆さんと共に滑稽の感動を分かち合うべく、今後とも精進を続けて参りたいと思っております。
 
 
愛媛県 伊藤洋二
初メロンかも知れぬこの不在票
 受賞の感想
  初回句が「特選」そして「人賞」に、ありがとうございます。俳都松山でお仲間と「出湯句会」並びに「松山滑稽句会」由緒ある「愚陀佛庵句会」・松風会に参加しております。
お仲間よりお誘い頂き即入会し、事務局の方からもご丁寧なご案内を頂きました。代打「八番レフト伊藤君・背番号一七」にチャンスを頂きヒットが打てました。
七月の運勢は「発展の月」とありました。コツコツと土づくりを行って、種を撒き大切に育てた種から「芽」が出る時期となります。撒いた種は、必ず芽が出ます。
十七文字による「創造の苦しみ」と「入選の恍惚」。そして「句会の楽しみ」を糧として団塊の階段を……。お仲間の方々、ご検索頂いた皆様に重ねて御礼申し上げます。
後日談、宅配便の「要冷蔵」を受取り、「不在票」とはなりませんでしたが、な、な、なんと「台湾のマンゴー」でした。「宮崎のマンゴーだろうか不在票」。
 
 
選 評    滑稽俳句協会会長 八木健
 「天」…靴で踏みつぶされる「ヤワ」な霜柱が、こともあろうに、時価十億もの土地を持ちあげた。句の裏には、土地の価格の異常を揶揄する気持がある。土地の価格が何億だろうが関係ない。霜柱は公平だ。担いでしまうのだ。その上でやはり霜柱を見直した可笑しさだろうね。霜柱さん案外やるじゃないかと。
「地」…ふぐの毒と時価を比較するというナンセンスが滑稽である。ふぐの毒の方が恐ろしいに決まっているのだが、ふぐ毒に当たると決まっているわけじゃなし、時価には直近の難題になるかも知れぬ切実さがある。人間は愚かなもので国立競技場設計問題、東芝のインチキ決算、いずれも目先の事を優先して物事を決める愚かさの結果である。ふぐの句には、一脈通じるものがある。
「人」…俳句は、脳裏に浮かんだことを描く。そして、その方法はまず、「つぶやき」である。「つぶやき」には作為がない。正直なものだから精神の記録ツールとして「スグレモノ」のである。この句の滑稽は「初メロン」を期待する「欲」の皮のつっぱりを呟いたことにある。読者が共感できるものだから、作者の正直に喝采するのである。
 

 

 

平成二六年八月号~平成二七年七月号特選句
   
権利金敷金不要西日付 小林英昭
放屁虫敵に後ろを見せて勝つ 永島董玉
目にものを言はさぬ為のサングラス 高橋素子
贅肉の日陰干なりハンモック 柳 紅生
逆引きの辞書をひもとく戻り梅雨 八洲忙閑
うるさかる蚊を閉ぢ込めて広辞苑 田中早苗
おどろしき現世へ魂を迎へをり 横山喜三郎
二学期の教室少し大人びる 西をさむ
おんぶバッタ死語となりたる内助の功  伊地知寛
死ぬつもりなくて滝壺覗き見る  下嶋四万歩
片蔭にわが影法師暗殺す 新島里子
建て前は建て前土用の鰻食ふ 白井道義
案山子翁秋田小町に一目惚れ 永島董玉
泳ぐこと想定外の水着かな   金澤 健
草の市みな持ちづらきものばかり 麻生やよひ
あの月はみんなのものと子を諭し  大澤酒仙奴
なんとかいう米どころなり蒲の花  山本 賜
燕去り村に無傷の空戻る 宮森 輝
骨だけとなりてかなしきいわし雲 小泉花子
死角なき防犯カメラ文化の日   飯塚ひろし
姥捨へ行く心地して敬老会   横山喜三郎
金塊を掘り出す如く栗ごはん   久我正明
をりとれぬすすきにごふをにやしけり   田村米生
小芋メをつひに刺したり箸の先 新島里子
水面より串の林やおでん鍋 有冨洋二
熱燗や顔じゅうの皺寄せ集め 菅野あたる
蛇穴に入り巻尺は釘箱に   原田 曄
手焙に母の埋めし不発弾   小林英昭
おほかたは無くてよき事神の留守    百千草
いつ咲けど私の勝手彼岸花 稲沢進一
一年の計を立てむと寝正月 永島董玉
霜柱地価十億を持ち上げる 菅野あたる
柱から尻尾の見ゆる漱石忌 小林英昭
寄鍋を打算が囲み懇親会 金澤健
頓智てふIQ高し一休忌 麻生やよひ
神の留守亭主を裁く山の神 柳紅生
あばれ独楽回転不足取られけり    工藤泰子
ふぐ料理毒よりこはき時価の文字   金澤健
直ぐ帰るインフルエンザの見舞い客 小泉花子
裸木に数多の股のありにけり     久我正明
寒鯉の動かぬといふこころざし 宮森輝
見て見ぬ振りハトが教えてくれた 鈴木和枝
靴下の先のほつれて春めけり   西をさむ
手に享けるバレンタインの試供品 菅野あたる
寒灯下推敲重ね季語削る    奥脇弘久
法の下の平等通らぬバレンタイン   上山美穂
珍しき年に一度の初日の出 伊藤浩睦
物差しで測れぬ隙間風通る   麻生やよひ
検尿も花見の酒も紙コップ 新島里子
三日分濃縮されし二月尽 笠政人
許可せぬに勝手に逃げる二ン月は   日根野聖子 
土手土筆鉄条網の囲ひ者 松井まさし
庭下駄に左右のしるし山笑ふ 田村米生 
落ちこぼれさうでこぼれず卒業す 横山喜三郎
下半身みなモザイクの蜃気楼 柳紅生
入選は事務の手違ひ受難節 下嶋四万歩
浴剤でめぐる温泉春うらら 小林英昭
踏むべからず色塗りたての芝桜 山下正純
春筍埋蔵金を掘る気分   田村米生
余所者と言はれる証雪解道   奥脇弘久
二の腕の嫌がってゐる更衣 下嶋四万歩
竹の子の走りや猪の一の膳 藤岡蒼樹
酔客にげんなりとして桜散る 横山喜三郎
ロボットを気ままに這わせ夏座敷 原田曄
ゴミほどに溜まらぬマネー万愚節    青木輝子
ぎつくり腰なぜか勤労感謝の日    上山美穂
ドンファンの気分に筍一気剥ぐ 壽命秀次
初メロンかも知れぬこの不在票 伊藤洋二
パンプスのトンネル潜り蟻の列 上山美穂
十万の人出に耐へてチューリップ 山本賜
平手打ち藪蚊の家宅侵入罪 柳紅生
言ひ訳のできぬ物出る土用干 田村米生