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第二回滑稽俳句協会報年間賞決定!
 
三重県 西をさむ
富士山を踏み固めるかや山開き
 受賞の感想
 「貰っておいてやる」と言うのは田中慎弥さんの名台詞ですが、私は「頂きます」「頂戴つかまつり候」と言いたい気持ちです。
富士山が世界遺産に登録され、登山者が俄に増加したニュースを見ていて この句が出来ました。スカイツリーやあべのハルカスと同一視されては霊峰 富士山が不憫に思えたからです。私も随分前に一度だけ富士登山をしました が、本当に数珠繋ぎの状態で、前の人のお尻を見ているばかりでした。所が 下山の時は全く違いました。富士山の横っ腹をぴょんぴょん蹴って跳び下り るのです。そう須走りです。今では富士山に申し訳ない事をしたと悔やんで います。夏山登山シーズンが終わり富士山に静寂が帰って来た時、国土地理 院に頼んで御山の標高を測って貰っては如何でしょうか。三七七五mメート ルに成っているかも知れません。そんなアホな。
 
 
山口県 有冨洋二
台風の生まれ予報士いきいきす
 受賞の感想
 「台風一過」、とても好きな言葉です。ぐずついた空模様から始まり不安を掻 き立てる強風雨。そして去った後の真青な空に爽やかな空気がもたらす安堵感。
ところでこの頃のテレビでは天気予報がめったやたらに増え、おのずと天気 予報士も顔を覚え切れないほど登場しますが、半世紀以上続いて三月に放送打ち切りになった某農機具メーカーの「天気予報」を超える印象の番組は、なか なか出て来ないですね。
天気予報では「風」も肝心なところ。歳時記の索引をみても、「青嵐」から「若
葉風」まで実に多くの風に関する季語があり、興味が尽きません。
台風の目つついてをりぬ予報官 中原道夫
猪もともに吹るゝ野分かな 松尾芭蕉
この度は思いもかけず当賞をいただきました。まだまだ自分の句風は定まら ぬところでありますが、これからも俳味のある句作りを続けていきたいと思い ます。ありがとうございました。
 
 
千葉県 飛田正勝
番組の途中ですがと春の地震
 受賞の感想
 「入選は忘れたころにやって来る」が私の実感です。だから五七五(七七) は止められない。年間賞「人」入選のお知らせにまたまた、止められなくな りました。「継続は入選です」。
蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻ございました。「川柳マガジン」時代から「滑稽俳句 協会」入会、自薦三句が活字になるのが楽しみで投句を続けて来ました。宗 匠のパワフルなコメントや付句がユニークで、楽しくて「タメ」になり、そ の量・質とも人間技とも思えず脱帽です。川柳から俳句・短歌と三兎を追っ て楽しみながら、ボツ句の山を築いております。老化が進み時々スイッチを 切り違えて「紛い物」が出来、反省の毎日ですが止められません。
投句者があまり増えておらず(?)、常連が多いのが気になりますが、入選 は「気付け薬」です。エージング中ですが、読んだり、詠んだり止められま せんね。
有り難うございました。重ねて御礼申し上げます。
 
 
選 評    滑稽俳句協会会長 八木健
 「天」...俳句は元来、季語を賛美するものであった。「山開き」には山のシーズンの始まりに 無事を祈り山の神に感謝する意味がある。滑稽句は季語の本意を裏切ることが作法である。 作者はテレビニュースで見た風景を詠んだのだろう。たくさんの人が山頂で右往左往してい る。山を踏み固めているように見えた。これでは、山がカチカチになってしまうと心配したの だ。 「地」...「台風は進路が逸れて朝鮮半島にぬけ、間もなく温帯低気圧に変わるでしょう」。な どと云う気象予報士は、心のどこかに「残念ながら」がある。大きな台風が発生すると、テレビ
に映る回数が増えるという期待に胸をふくらませることになる。「君君、もう少し心配そうな顔 はできないかね」と上司からはクレーム。気象予報士の本音を炙り出したところを評価。 「人」...「番組の途中ですが」と云ったのは、本当はニュースキャスターだろうが、地 震を擬人化して地震が云ったかにも読める。震度三ぐらいでも驚くのに震度四の地震 が頻発。地震が日常的になって、茶の間とも馴染みになって馴れ馴れしく遠慮がない。 番組の途中の地震速報のアナも、地震さんも日常的過ぎることの滑稽と警告。
 

 

 

平成 25 年 8 月号~平成 26 年 7 月号特選句
   
色うすく効き目無さそうサングラス 笠 政人
脱臼も骨折もあり梅雨の傘 久我正明
富士山を踏み固めるかや山開き 西をさむ
富士山をみたくて急ぐ蝸牛 山本 賜
サングラス余計目立つてしまひたる 加藤 賢
サングラスかけて小心際立てり 金澤 健
あちこちにためらい傷の宇治金時 有冨洋二
雀らを休ませてやる案山子の手 永島董玉
いらいらを錐揉みにして髪洗う  青木輝子
蝉よ鳴け思い切り鳴け今でしょう  齋藤八兵衛
物理学的実証の遠花火 西をさむ
大相撲観ながら学ぶ世界地図 伊地知寛
とんぼうに水平思考あるらしく 工藤泰子
百薬の長毒となる夜長かな   都吐夢
科捜検に回す証拠の放屁虫 西をさむ
蛇穴に入り金運の遠ざかる  越前春生
真実を少し曲げての夏化粧  森岡香代子
五合目から崩し始めるかき氷 金澤 健
台風の生まれ予報士いきいきす 有冨洋二
骨折を危惧し山芋には添へ木   小林英昭
下半身略されてをる案山子翁   柳 紅生
CDの第二の職場鳥威   高橋きのこ
ファッションのつまるところは丸裸   酒井鹿洋
秋の蚊の待ち伏せに遭ひ勝手口 高橋マキコ
消費税取るようにして胡麻搾る 伊藤浩睦
除夜の鐘下向いて聞くスマホ病 粟倉健二
野分くる次の野分を従えて   高橋マキコ
喧嘩のタネはサンタさんのいるいない   上山美穂
散り終へて糞だけ残し白粉花    井口夏子
懐手有言なれど不実行 麻生やよひ
悴みて崩し字うまくなりにけり 下嶋四万歩
鬼やんまごとく縄張り防空圏 酒井鹿洋
三が日無形文化遺産食う 石川セツコ
一年の計の変更初仕事 伊地知寛
それまでは保つかと五年日記買ふ 有吉堅二
二股大根沐浴のごと洗ひ 久我正明
畳目を舐めるが如く日脚伸ぶ    永島董玉
歌留多とり小町式部の胸を触れ   柳 紅生
寄合うて列島ちぢむ寒波かな 金澤 健
歯を嵌めて素顔に戻る初鏡     菅野あたる
寝返りを打って難破の宝船 白井道義
三角と丸が連なる古日記 井口夏子
割烹着で試験管振る春隣   奥脇弘久
過不足のすぐ顔に出るお年玉 田村米生
引鶴の頸光陰の矢となりて    永島董玉
春日背に浴びて窓際族冥利   都吐夢
練習のわりに大声して初音 有冨洋二
初期化なり老ひたる猫の恋もまた   高橋素子
絶間なき雪解雫と小言かな 下嶋四万歩
豆いりて強面鬼の面いらず 山下正純
勝ち負けの五輪うんざり日向ぼこ   酒井鹿洋 
咲いてすぐ散る算段の寒椿 山本 賜
娘の齢をうつかり聞きし雛の夜 越前春生 
竹島も魚釣島も春隣 久我正明
急峻に膝のがくんと山笑ふ 八洲忙閑
襟足のマークを隠す春ショール 田村米生
増税の前に投句や三月尽 原田 曄
永田町周辺年中万愚節 横山喜三郎
大嚔寸前にして有耶無耶に   加藤 賢
甘いもの見せると動く万歩計   齋藤八兵衛
番組の途中ですがと春の地震 飛田正勝
魚では唯一学歴あり目高 花岡直樹
スカイツリー隠れモデルの葱坊主 山下正純
葉桜やだめでもともと発毛剤 小林英昭
北窓を開ければ向かひは南窓    津田このみ
待つ人へ手を挙げて来るサングラス    氏家頼一
大奥に不穏な空気冷蔵庫 小林英昭
蚯蚓出て五分の魂一寸に 永島董玉
息切れの譲り合ひなり登山道 有冨洋二
虹二重三角関係に悩む神 高橋きのこ
缶ビール飲んでぐしゃりと今日を捨て 西をさむ
軽すぎる悩みに跳ねて水馬 久松久子