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親指と小指がんばる素足かな
夏のマスクに隠れてる舌二枚ほど
扇風機新しければその風も
襟立てて不良のつもり夏のシャツ
身重とも見え枇杷の種大きくて
噴水に合はす屈伸ストレッチ
強面の崩るる寝顔三尺寝
蟻の顔よく観てみれば日本人
帰省せずオンラインにて済ますなり
銀河系歩いて来たか天牛は
大文字火の筆順を間違える
発条仕掛けゆるみしものも時計草
成績の悪し糸瓜の骨密度
捕虫網何か求めて空を切る
かなと言ふ人を呼んでる蜩は
生き方を変えたか花器の枯芒
マスクメロン食って感染予防する
大夕焼熟れたる色をしてゐたり
代議士の襟だけ飾る赤い羽根
母笑うガラス戸越しの敬老日
片恋の二人三脚運動会
風鈴の引退風に別れ告げ
そぞろ寒無頼追ひ遣るデジタル化
爽やかや口元にご飯つぶ付けて
ものぐさでぐうたらずぼら秋刀魚焼く
天ぷらにされる積もりもなき紅葉
隙間風佐藤鈴木と高橋に
揺れやまず記憶の中の芒原
裏表選べぬままに色葉散る
雑炊で皆幸せな結末に
木漏日になつて小分けをする冬日
いわし雲目から綺麗な鱗落ち
あらばしり一言居士がしゃしゃり出る
柿吊すたんびに腰のストレッチ
混浴が旨さの秘訣おでん鍋
ちらちらは冬日の癖やガラス窓
若水をごくごく私真つ新に
シャッターの音も軋むや寒の入
値札見て選る守り札初詣
懐の深さに甘え春の猫
怪獣になつたつもりへお年玉
枯はちす調子に乗つてやりすぎて
テーブルに鶯餅の鳴いた跡
密なるを褒められてゐるブロッコリー
見ましたね女の髭と背のカイロ
幸福はひらけば終わる福袋
咬みこんで無口貫く冬の鍵
放談の出口へ蓋の大マスク
風に恋しては振られるしやぼん玉
頑固さはもう捨てました春キャベツ
春光は買い占められることもなく
蛇出でて腰のあたりの力ぬく
失恋の始めはバレンタインの日
咥へくるクロネコヤマト桜鯛
デジタルの世に目視の開花宣言
三人の集まってる日春の文字
尾が失せて去らねばならぬ蝌蚪の国
人を連れ犬が集まる春の道
かたつむりみんながみんな大家さん
燃えるよな恋ご法度や雪女
紋白蝶が気になって仕方ない葱坊主
四月馬鹿軽くも重くも悪い尻
ランナーと競ひ流るる春の川
せんせいと呼ばれみどりの羽根を挿す
誰よりも先に新茶を嗅ぐ鋏
一円玉見いつけた更衣
ソフトクリームむかしのかほでなめている
草取りの庭は土俵よ待ったなし
根っからの無党派ばかり葱坊主
その光天に届けむとして蛍
燕の巣中古物件そこここに
水面の硬きと知りぬあめんぼう |
渡部美香
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