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第九回滑稽俳句協会報年間賞決定!
 
三重県 小林英昭
木漏日になつて小分けをする冬日
 受賞の感想
 俳句上達の要諦は多作多捨にあり。言い古された言葉ではあるが、その意味するところは今も生きています。(ここでちょっと自慢?)
 わたしは投句するための句を常時一シーズン二千句ほど用意しています。その中からこれと思うものを選び推敲を重ねて投句するのです。これがまた難題。「選句は創作」と虚子先生は喝破されています。自句のどんぐりの背比べの中から選ぶのですから、これが句を作るより難しい。ああでもない、こうでもないと言っているうちに、極わずかずつ上達するのでしょう。
 まあ、そんな亀のような歩みのわたくしに、その努力に対して、このたび「天」をいただいたものと思います。
 これを機にますます多作多捨をこころがけて、俳句創作につとめてまいります。 このたびは有難うございました。 
 
 
三重県 田村米生
噴水に合はす屈伸ストレッチ
 受賞の感想
 令和二年七月の第八回滑稽俳句協会報年間賞「人」の受賞の報には、思わず眼鏡を掛け直しました。その興奮をまだ忘れておりません。
 そして、今回、第九回滑稽俳句協会報年間賞「地」に選ばれました報には、老眼鏡を掛け落してしまいました。
 コロナ禍と梅雨で身動きのできない昨今、悶々の日常生活に神佛の後光が射し込んだ気分です。
 受賞句は、某月某日、噴水のある某公園で浮かんだ句です。某人(名前は秘密)と待ち合せの約束をしていましたが、なかなか来ないので待ち疲れを癒すためにストレッチをしていたのです。
 このたびの受賞の報に、齢も忘れて「ヤッター!」と飛び上りました。この声に老妻がびっくりして部屋に飛び込んできました。 その日の夕食には缶ビールが一個、余分についていました。 
 
 
東京都 山本 賜
扇風機新しければその風も
 受賞の感想
 俳句を「ひねる」という表現は好きではありませんが、ひねらないと可笑しい句にならないということに気づきました。
 わが家の扇風機は年代物です。動いているから捨てきれないのですが、扇風機が古いので風も古臭いという気がしていました。ということは、新しい扇風機にしたら風も新しくなるのではないか、とふと思ったのです。それから私の脳内には新しい扇風機がイメージされました。脳内の扇風機は、風も新鮮で勢いがいい。
 「扇風機新しければその風も」の句ができました。時間をかけないでも扇風機を新調したつもりになれば句になるものですね。俳句は頭の中に浮かばせた別世界。風は扇風機が古くても新しくても変わらないのですが、これが私流の「ひねり」です。
 「人」の受賞に目が覚めました。もう少し頑張れという、これは奨励賞と受けとめ、これからも滑稽俳句協会の皆様と、俳句の道を歩みたいと思います。 
 
 
選 評    滑稽俳句協会会長 八木健
「天」…太陽は満遍なくそのやわらかな暖かさを分け与えたいと考えたのだろう。 そうだ、木洩れ日にして小分けすればいいのだ。擬人化することでやすやすできた句と思われる「葉桜の中の無数の空さわぐ」(篠原梵)に勝るとも劣らず。

「地」…風景の良く見える滑稽句。無意識にしていることが滑稽というのは良くあるが、それに気がつく感性がないと滑稽句はつくれない。頭も心もストレッチして柔らかくしておくことが肝心

「人」…扇風機が古ければ風も古く、新しければ風も新しいとは非科学的であるが、非科学的であればあるほど詩的濃度は高くなる。俳句は理屈ではない。何を感じたかを描くものだということを教えてくれる一句
 

 

 

令和二年八月号〜令和三年七月号特選句
   
親指と小指がんばる素足かな
夏のマスクに隠れてる舌二枚ほど
扇風機新しければその風も
襟立てて不良のつもり夏のシャツ
身重とも見え枇杷の種大きくて
噴水に合はす屈伸ストレッチ
強面の崩るる寝顔三尺寝
蟻の顔よく観てみれば日本人
帰省せずオンラインにて済ますなり
銀河系歩いて来たか天牛は
大文字火の筆順を間違える
発条仕掛けゆるみしものも時計草
成績の悪し糸瓜の骨密度
捕虫網何か求めて空を切る
かなと言ふ人を呼んでる蜩は
生き方を変えたか花器の枯芒
マスクメロン食って感染予防する
大夕焼熟れたる色をしてゐたり
代議士の襟だけ飾る赤い羽根
母笑うガラス戸越しの敬老日
片恋の二人三脚運動会
風鈴の引退風に別れ告げ
そぞろ寒無頼追ひ遣るデジタル化
爽やかや口元にご飯つぶ付けて
ものぐさでぐうたらずぼら秋刀魚焼く
天ぷらにされる積もりもなき紅葉
隙間風佐藤鈴木と高橋に
揺れやまず記憶の中の芒原
裏表選べぬままに色葉散る
雑炊で皆幸せな結末に
木漏日になつて小分けをする冬日
いわし雲目から綺麗な鱗落ち
あらばしり一言居士がしゃしゃり出る
柿吊すたんびに腰のストレッチ
混浴が旨さの秘訣おでん鍋
ちらちらは冬日の癖やガラス窓
若水をごくごく私真つ新に
シャッターの音も軋むや寒の入
値札見て選る守り札初詣
懐の深さに甘え春の猫
怪獣になつたつもりへお年玉
枯はちす調子に乗つてやりすぎて
テーブルに鶯餅の鳴いた跡
密なるを褒められてゐるブロッコリー
見ましたね女の髭と背のカイロ
幸福はひらけば終わる福袋
咬みこんで無口貫く冬の鍵
放談の出口へ蓋の大マスク
風に恋しては振られるしやぼん玉
頑固さはもう捨てました春キャベツ
春光は買い占められることもなく
蛇出でて腰のあたりの力ぬく
失恋の始めはバレンタインの日
咥へくるクロネコヤマト桜鯛
デジタルの世に目視の開花宣言
三人の集まってる日春の文字
尾が失せて去らねばならぬ蝌蚪の国
人を連れ犬が集まる春の道
かたつむりみんながみんな大家さん
燃えるよな恋ご法度や雪女
紋白蝶が気になって仕方ない葱坊主
四月馬鹿軽くも重くも悪い尻
ランナーと競ひ流るる春の川
せんせいと呼ばれみどりの羽根を挿す
誰よりも先に新茶を嗅ぐ鋏
一円玉見いつけた更衣
ソフトクリームむかしのかほでなめている
草取りの庭は土俵よ待ったなし
根っからの無党派ばかり葱坊主
その光天に届けむとして蛍
燕の巣中古物件そこここに
水面の硬きと知りぬあめんぼう 
渡部美香
南とんぼ
山本 賜
吉川正紀子
桑田愛子
田村米生
峰崎成規
土屋泰山
井口夏子
桑田愛子
西をさむ
工藤泰子
花岡直樹
稲沢進一
土屋泰山
上山美穂
荒井 類
桑田愛子
高橋きのこ
龍田珠美
白井道義
吉川正紀子
峰崎成規
藤森荘吉
白井道義
藤森荘吉
遠藤真太郎
吉川正紀子
井口夏子
八塚一
小林英昭
金城正則
青木輝子
森岡香代子
藤森荘吉
山本 賜
山田真佐子
横山洋子
百千草
柳 紅生
和田のり子
山本 賜
八塚一
工藤泰子
南とんぼ
久我正明
森岡香代子
柳 紅生
竹下和宏
鈴木和枝
八塚一
井口夏子
西をさむ
椋本望生
月城花風
田中早苗
峰崎成規
桑田愛子
竹下和宏
壽命秀次
鈴木和枝
青木輝子
月城花風
西をさむ
久我正明
吉川正紀子
大林和代
吉川正紀子
鈴木和枝
森岡香代子
井野ひろみ
山下正純