| お問い合わせ | ご利用にあたって |

第一回 第二回 第三回第四回第五回第六回第七回第八回第九回
第十回第十一回 第十二回 第十三回
第十三回滑稽俳句協会報年間賞決定!
 
愛媛県 森岡香代子
何処へいく木の葉のきつぷ風の駅
 受賞の感想
 この俳句ができたきっかけは、我が家の庭の一本の白い薔薇です。約二十年前に植えて以来、春夏秋冬といつも句のモデルになってくれています。今では、かなりの古木になっていますが、まだまだ元気で春にはたくさんの蕾をつけてくれます。雨が降れば病葉となり、冬は枯れ葉となります。
 冬の枯れ葉たちは、あちらこちらに集まり、次の目的地を探しているかのように風を待っています。ある日ふと、枯れ葉は「木の葉のきっぷ」ではないかと気が付きました。
この薔薇の品種は「アイスバーグ」。我が家のシンボルツリーになっています。現在は、薔薇も三十二種類に増え、それぞれが個性を出して、それぞれの「駅」に向かっています。
暑さにぐったりしたり、風に吹かれたり、井戸水を飲んでピーンとしたり、薔薇の話は尽きません。
薔薇づくりは、苦労もありますが、成功したり失敗したりの全てが新しい出来事です。
これからもどうぞよろしくお願い致します。
ありがとうございました。 
 
 
愛媛都 日根野聖子
走り梅雨歩き梅雨つてあるのかな
 受賞の感想
 俳句をはじめて二十年ほどになりました。俳句をはじめたきっかけは、八木健会長の俳句を拝見したことでした。普段使っている易しい言葉で、日常のなんでもない場面や気持ちが句になっていました。子どもの頃に教科書で習った俳句とは全く違っていて、とても新鮮な感動を受けました。へぇー、こういう風に作っていいんだ、こういう句を詠めたら楽しいだろうなあ、こういう俳句だったら作ってみたいなあと思ったのでした。あれから二十年、ずっと続けてこられたのは、毎月の句会と仲間と、滑稽俳句協会や仕事で出会う俳人の皆様のお蔭です。
二十年経ってもいまだに知らなかった季語、日本語に出会うことも多く、へぇーこんな言葉があったのか! とビックリする日々です。これは、私の勉強不足のせいではありますが、日本語の尽きない豊かさによるものでもあります。新しい言葉に出会う度に、反省の一方で、日本人の感性や言語感覚の繊細さに嬉しくなります。
俳句の「俳」とは、「滑稽」という意味です。その「滑稽」の原点は、人間の優しさではないかと思います。易しい言葉で、優しい心を詠めるといいなあと思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。  
 
 
愛媛県 上甲 彰
大根一本初めてのおつかいの
 受賞の感想
 第十三回滑稽俳句協会報賞「人」をいただきました。私にとってこの上ない名誉な事で、ノーベル文学賞を受賞したのと同様の喜びであります。ありがとうございました。
受賞句は、昔テレビで観た番組のことを思い出して詠みました。それは、日本テレビの「はじめてのおつかい」です。
「はじめてのおつかい」は、平成三年から三十年以上続く人気番組です。幼い子が親に言われて、初めてのお使いに挑戦します。緊張し、お金を握りしめて、人生初めての任務です。
その番組でこんなことがありました。テレビ局から母親に買い物のメモが渡されました。そこには「秋刀魚」と、書いてありました。若い母親は子どもに言いました。「魚屋さんに行って『たちうお』を買ってくるのよ」。秋刀魚と太刀魚を間違えたのです。結局、その子が買い物ができたかどうかは覚えていませんが、毎回、子どもの一生懸命な姿に感動します。
私は現在、保育園に用務員として勤務しております。これからも、子どもを詠んでいこうと思っています。   
 
 
選 評    滑稽俳句協会会長 八木健
生き生きとした個性に瞠目です。滑稽句という「文化財」がまた増えました。

「天」…木の葉を手紙や紙幣に見立てるのはあるが、「きっぷ」というのは新しい。しかも風の駅を乗り継ぐのだから、どんな旅をするのだろうと読者の想像を楽しくさせる。句を読んだ瞬間に、詩の世界に引き込まれる。

「地」…本格的な梅雨の先駆けは「走り梅雨」とよばれるが、「走り」の意味を読み替えての遊び心の句である。これは考えてできる句ではない。童心による傑作である。童のような遊び心で句を詠むと、滑稽俳句ができる。

「人」…幼い子どもにとって大根一本は、とんでもなく長くて重い。汗をかきかき懸命に家に戻る子どもの姿が描かれている。「大根一本」で切れていることで、大根の大きさや運ぶことの大変さが強調されている。
 

 

 

令和六年八月号~令和七年七月号特選句
   
口開ける金魚欠伸にちがひない
風鈴の百の共鳴百の揺れ
まつすぐに日本の文化松の芯
崩れ落つために高きへ噴水は
器量とは魚にもあり捨て鯰
白南風に乗りうどん屋のんの字は
白地着て筋金入りのへそ曲り
逢ひ引きの蚯蚓しの字に干涸びて
針の穴見つけて通る大西日
なめくぢり進む原理が解らない
炎天下豆を煎るかに砂の浜
生ビール一杯二杯が五六杯
新品種のルーツはこれぞ黒葡萄
体重計絵踏のごとくそつと乗り
息すれば肺が灼けつく酷暑かな
冷気より涼風ほしき昭和人
台風来両手に土産の雨さげて
振り向けば男も日傘笑み返す
回転寿司はITづくし秋の夕
縄文のビーナスの尻弾け秋
窓際を上手に生きておでん酒
里芋だけを食べたのは誰芋煮会
新涼の蛸の血ヘモシアニンの色
憤怒こそ生き抜く力枯螳螂
かたくなに守る手書きや文化の日
児に貰ふ紙の勲章文化の日
飛ぶたびにスクワットしてバッタかな
この焚火果たして違法か合法か
はばかりの外にいつもの金木犀
小鳥来る監視カメラを避けて来る
何処へいく木の葉のきつぷ風の駅
四苦八苦掛けて足したら除夜の鐘
値上げに遅配それでも出します年賀状
淑気満つ楕円な暮らし真四角に
どの口も寒さばかりをぼやき行く
浅漬や時短時短の流行る現代(いま)
雪が来るべたべた白をぬりに来る
少年の大志五十路の埋火か
宝船枕の下で沈没す
予定にはのんびりと書き初暦
年玉をスマホで送金詐欺のごと
一打ごと煩悩砕く除夜の鐘
咲けるだけ咲かそうクレヨンのチューリップ
べつたりと貼り付くやうに春の風邪
着ぶくれて自転車またぐよいしょかな
大根一本初めてのおつかいの
蕎麦湯のむ湯気に眼鏡は眠くなり
凍て進む漬物石の重さにも
四月馬鹿惚(ほ)れたり惚(ぼ)けたり惚(とぼ)けたり
しらすぼし千の命を噛む夕餉
老眼鏡拭いても大根にしっぽあり
春風邪に油断めさるなあばら骨
電線の五線譜のソラ百千鳥
雛あられお醤油色の食卓へ
裏表噓を表の万愚節
目の奥に春の憂鬱のある埴輪
たんぽぽや黄色に生まれてよかったね
まつすぐに生きて切なし猫の恋
さくらさくら散りながら居場所探します
蕗の薹苦味の分かるお年頃
子も四十大人ばかりのこどもの日
聴診器の胸に貼りつく夏に入る
分身に痛くはないか心太
花びらを散らし普通の木にもどる
いつまでも高値いやがるキャベツ
春愁を刈り取つてくれ床屋さん
ハイテクの無痛の針や蚊はどれも
侘び寂びを求めて来れば黴(かび)の宿
農協のおばさん今日は早乙女に
空と枝ビールが取り持つ豆の仲
走り梅雨歩き梅雨つてあるのかな
歯が立たぬ夏大根も頑固者
吉川正紀子
西野周次
工藤泰子
井口夏子
久松久子
桑田愛子
白井道義
壽命秀次
森岡香代子
椋本望生
吉川正紀子
細川岩男
井口夏子
北熊紀生
伊藤浩睦
横山洋子
吉川正紀子
久松久子
上山美穂
長井多可志
永井流運
吉川正紀子
桑田愛子
峰崎成規
白井道義
長井多可志
相原共良
千守英徳
土屋泰山
峰崎成規
森岡香代子
ささのはささら
南とんぼ
遠藤真太郎
日根野聖子
ほりもとちか
森岡香代子
北熊紀生
久松久子
加藤潤子
井野ひろみ
門屋 定
加藤潤子
岡本やすし
上山美穂
上甲 彰
土屋泰山
工藤泰子
青木輝子
敷島鐵嶺
鈴木和枝
遠藤真太郎
谷本 宴
渡部美香
森岡香代子
谷本 宴
井口夏子
黒田久美子
大林和代
稲葉純子
桜井美千
田中やすあき
北熊紀生
上山美穂
鈴木和枝
柳 紅生
森岡香代子
八塚一靑
髙須賀渓山
花岡直樹
日根野聖子
吉川正紀子