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第十一回滑稽俳句協会報年間賞決定!
 
岡山県 工藤泰子
なかほどにお詰め下さい鰯雲
 受賞の感想
 この度、第十一回滑稽俳句協会報年間賞の「天」に選ばれて、うれしさに舞い上がっております。もちろん「天まで」です。 秋の空、巻積雲が出てきました。空の雲なのに、さば、いわしなど海の生き物の名で呼ばれ、群れています。少し低いところに出る高積雲は、白いひつじの群れに見えます。人は、空という大舞台の「雲行き」で、天気や未来、そして天下を占ってきました。 鰯雲が、投網を投げたくなるような大きな群れで現れました。下界の駅のホームでは、「なかほどにお詰めください!」と駅員のアナウンスが流れています。混んでいるのは出入口で、中ほどは空いているはずです。 空の奥に、自分の居場所が見つかるでしょうか? レオ・レオニの絵本「スイミー」を思い出しました。みんなで助け合うお話でした。メルヘンで雲を掴み、鰯の頭は信じたい。
 
 
愛媛県 上山美穂
電柱も棒立ちとなり冬の朝
 受賞の感想
 滑稽俳句協会報年間賞の受賞、大変嬉しく存じます。 いただきました賞の「地」は地球のイメージですね。ニュートンは林檎と地球が引き合う万有引力の法則を述べていますが、私と地球も引き合っているのでしょうか? 冬の朝、寒さにシャキーンと目覚めた様な気もするのですが、その一方では疲れがとれきれず夢うつつの様な気分で歩いていました。周りの木々や建物は、地に足をつけているはずなのに、ふわふわ浮いている様な、不 思議な感じで通り過ぎていきます。電柱は、まるでぼーっとして棒立ちになっているかのよう。 俳句は自由に気分を表現出来て、しかも何処か科学の法則にも則っていて、楽しいなと思います。 ちなみに、年間賞「地」の受賞を知った時、驚きと感激と恐縮の思いでいっぱいの私が、暫く棒立ちになっていたのは、言うまでもありません。 
 
 
愛媛県 森岡香代子
ほんとうはみんなかなづち鯉幟
 受賞の感想
 第十一回滑稽俳句協会報年間賞の「人」に選んでいただきありがとうございました。 受賞の句は、いつの間にか思い込んでいることをゼロにして、先生の教えを胸に、素直に思ったことをそのまま書きました。 受賞の感想をうまく表現できないので、八木健先生と出会ってからの十数年間のお気に入りの句をご紹介いたします。 記念にと自分の投句を選句する 初参加の句会でのエピソードを詠んだ無季の句。句会は大爆笑になりました。 水鉢の魚動いて水笑ふ 初めて八木先生に褒めていただいた句。 満月を舐め終えたらし屋根の猫 娘が拾ってきた猫を私が面倒をみる羽目になりました。猫の恩返しか、会報で特選にとっていただいた句。 初蝶のよちよちあるくかぜのうえ 自然の豊かさからいただいた句。 さぁ、今日からまた新たな気持ちで俳句を始めよう?  
 
 
選 評    滑稽俳句協会会長 八木健
生き生きとした個性に瞠目です。滑稽句という「文化財」がまた増えました。

「天」…鰯雲は神の造形作品である。「なかほどに詰めて」と声がけしてどうにかなるものではない。それを承知のうえで書いた写生句だが、遊び心がいいね。

「地」…電柱は常に棒立ちなのであるが、冬の朝は寒さゆえに緊張状態となる。佳い滑稽句は擬人化になりやすい。この句には、電柱と化した作者が存在している。

「人」…作者だけが発見したものを書き、読者は自分では気が付かなかったと悔しがる。森岡さんは、固定観念から自由になって物事を見ることのできる眼鏡を持っている。
 

 

 

令和四年八月号〜令和五年七月号特選句
   
駅員の白き手袋夏燕
歯の抜けたやうな町並み梅雨に入る
ストライクボールの声も汗をかき
たたかれて熟してゐると言ふ西瓜
どの子にも愛を等しく軒つばめ
空(くう)を掻く今際の時の蝉の脚
くもの囲や数多の星をとらえたる
パリッパリに乾くジーンズ夏旺さかん
押しだされ水からくりの心太
雷を避けて通れぬ避雷針
放課後のいの一番のかき氷
性格の違う茄子なすびの光り合う
個人的にはよく分からない鮎の味
おひさまの角取れている今朝の秋
鈴虫の籠かごを振るなと言うたのに
秋の風ひとさし指でなめてみる
嫁と夫半分ずつの缶ビール
小旅行猪町を闊歩する
ナイターに飛び交ふ野次の刺せ殺せ
たうがらし色艶ともに勝気なる
ごろんごろ冬瓜は主役になりたくて
ひやとひの群れる淋しさ曼珠沙華
なかほどにお詰め下さい鰯雲
病むことを大いに語り敬老日
見つめられ食われて赤面秋の月
ご贔屓の家を忘れず焼芋屋
ヘアピンの指にヒヤリと冬に入る
凩の果てはありけりビル谷間
パトカーの隠れてゐたる十二月
毬栗を握ってみたくなる衝動
電柱も棒立ちとなり冬の朝
表裏裏裏表落葉道
芋掘りの園児コロコロバスを降り
眼鏡掛け眼鏡を探すレノンの忌
熱燗に決定女将の処方箋
裸木に防犯カメラ臍のごと
久々にポスト満腹賀状食べ
一糸纏まとはぬ裸木のほこらしげ
玄関に十四五足もありお正月
しもやけの足しもやけの足で掻く
吾の逝く日あると思ふよ初暦
初接吻出会ひ頭の獅子舞と
吉野家の卵かけごはんも寒卵
春寒しロールケーキに巻かれたい
可愛いいと褒めれば欠伸春の猫
盆栽も爺もひねくれ去年今年
大根が幅を利かせてゐるおでん
裸木に選挙ポスター縋すがり付く
入管の手続き踏まず来し黄砂
啓蟄の鼻毛句会に出てきたか
若布茹で化学変化のお勉強
日脚伸ぶちよつと巴里まで宇宙迄
日めくりの下で立春出番待つ
番犬を尻目に恋猫の出陣
行先は俺も桜も同じ土
筍のゆですぎ会話はずみすぎ
早よ歩けと圧力かける春一番
子の通る度ひなあられ減ってゆく
「手を焼く」は火傷にあらず山笑ふ
初蝶のよちよちあるくかぜのうえ
ワープロのあの字行進目借時
ほんとうはみんなかなづち鯉幟
来てくれて帰るから好き子どもの日
泣き黒子ぼくろ乾かしている梅雨晴間
菜の花の黄の帝国となりにけり
海苔巻の黒船出たり江戸前屋
地下出口自首するやうに炎昼へ
意の儘ままにジルバにルンバ水馬
薫風はギザギザワニの歯駆け抜けて
逆上がりするたび開く百合の花
父の日の自販機やさしき言葉して
他所の庭に生えてれば好き夏の草 
桑田愛子
鈴鹿洋子
遠藤真太郎
森岡香代子
柳 紅生
渡部美香
森岡香代子
柳村光寛
井口夏子
桑田愛子
久我正明
鈴木和枝
山本 賜
山下正純
八塚一
吉川正紀子
田中早苗
岡田廣江
壽命秀次
西野周次
和田のり子
田中 勇
工藤泰子
白井道義
花岡直樹
竹下和宏
桑田愛子
井口夏子
久松久子
赤瀬川至安
上山美穂
小泉和子
壽命秀次
峰崎成規
月城花風
大林和代
稲葉純子
吉川正紀子
花岡直樹
加藤潤子
ほりもとちか
桑田愛子
金城正則
八塚一
ほりもとちか
南とんぼ
山本 賜
久松久子
竹下和宏
加藤潤子
山内 更
西野周次
藤森荘吉
久松久子
木村 浩
加藤潤子
月城花風
ほりもとちか
荒井 類
森岡香代子
土屋泰山
森岡香代子
南とんぼ
桑田愛子
田中 勇
北熊紀生
峰崎成規
西野周次
上山美穂
久我正明
田敏男
南とんぼ