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第一回滑稽俳句協会報年間大賞決定!
 
東京都 藤森荘吉
   短夜を走るラジオの深夜便
受賞の感想
 身に余る光栄でございます。かくなれば、
 長き夜の更けてラジオの俳句便  荘吉
 六十歳パン食系男子(私のこと)としてはユニークな俳句番組のアンカーをつとめることを次なる夢(目標)としたいですね。
 ラジオは耳で聴いて視覚的には自由に想像を拡げられる。
 はてさて―今回のお題は、ムソルグスキーの「展覧会の絵」を聴いてとか、ラヴェルの「ボレロ」を聴いて…、はたまたサザンオールスターズの「いとしのエリー」、尾崎亜美の「春の予感」を聴いて一句お寄せ下さい―なんていうのも面白そうでしょう。虫の声や雨音等、効果音でも良いかも。放送中にメールやファックスで投句受付。ベストワンは各国語に翻訳して世界に発信。実現したい夢。
  叶ふかも真夏の夜の夢なれば  荘吉
 
 
神奈川県 伊地知寛
   カラオケのマイク争奪敬老日
受賞の感想
 九州の人のわらいが、北海道の人の心に点火し、やがて、各地にわらいの輪が広がっていく。そういった滑稽俳句の真髄を満載した会報紙を首を長くして待っています。
 この度は、第一回滑稽俳句協会報年間賞の「地賞」に拙句を選んでいただき、誠にありがとうございました。記録的猛暑やら寄る年波の体調不良やらに、気力を欠いていた矢先の入賞のお知らせは、まだまだ駆け出しの私に対し、最近の不出来への叱責とも、時宜を得たなかなかのほめ上手ともとれて、感服致しました。
 これでまた勇気百倍、ご鞭撻に報いられるようがんばります。ご指導よろしくお願い致します。
 腰痛も生命の証土用灸
 
 
島根県 飯塚ひろし
   長命を嘆いてみせし生身魂
受賞の感想
 「長命を嘆いてみせし生身魂」の作品が、第一回滑稽俳句協会報の年間賞を戴くことになり、心から喜んで居ります。
 これも八木健会長のご指導・ご薫陶を賜った御蔭と厚く感謝して居ります。揚句は年毎に伸びる平均寿命と幸福とが比例していない点を衝いたものです。登場人物は、九十一歳の老婆の実話です。年は取っても彼女は、朝夕、散歩を欠かさず、健康そのもの。逢って話をすると、決まって「いつの間にか九十一歳も過ぎて、長生きをしたが、何もよい事はない」と長命を嘆かれる。
 この作品の面白さは、裏切りにあり、長命は祝うべきだとする世間の通例を見事に打ち破った点にあります。普通の俳句を多作していると、滑稽俳句が自然発生するもので、大笑いを狙って滑稽句を作ると大抵は失敗する。笑いは微苦笑程度にしたいものである。
 有り難う御座いました。
 
 
  選 評    滑稽俳句協会会長 八木健
 「滑稽俳句協会報年間賞」は、滑稽俳句協会設立五周年を記念し、優れた滑稽俳人、滑稽俳句を顕彰するために創設した。会報の特選句から、天・地・人を選出するにあたり、すでに特選に選ばれた作品の中から三句を選ぶのは難しかった。「天」に選んだ理由は軽妙さにある。深夜便だから走るのだろう。短夜だから焦ってもいるだろうとアンカーマンへの思いやりもある。滑稽は語源からして「すらすらと」喋り倒す軽妙が真骨頂である。「すらすらの軽妙が佳し藤森さん」。「地」に選んだ句は、敬老日という温かみのある季語をマイク争奪と言う険悪な風景にした「裏切り構成」を評価した。「人間を描いて巧み伊地知さん」。「人」に選んだ句は、川柳に通じる「穿ち」が見事である。長命で家族に迷惑をかける、などと言いながら健啖で家族の中で一番の元気者だったりするから可笑しい。「生身魂の本音を穿ち飯塚さん」。
 

 

平成二四年八月号〜平成二五年七月号特選句
   
健康食金持ちならば麦を食え 伊藤浩睦
省エネのひとつの形糸とんぼ 稲沢進一
節電に汗だく駄句の句会かな 川島智子
左手に聖書右手に蝿叩き 百千草
水着は見せるものパンツははくもの 松尾軍治
O型の血を吸ひ蛭の丸く落つ 田中早苗
見上ぐれば口の開くなり天の川 有冨洋二
カラオケのマイク争奪敬老日 伊地知寛
雨上がり水増しと言ふ大西瓜 柳 紅生
細縞の水着を着れば太縞に 田村米生
切手ほどの水着を着けて泳ぐかな 井口夏子
長命を嘆いてみせし生身魂 飯塚ひろし
人の上人を作りて天高し 酒井鹿洋
もつと高く噴水重力に勝つ 秋月裕子
首吊るに程よき高さ蜘蛛の糸 小泉花子
この下に活断層や花野行く 石川節子
友だちの友だちはみなゐのこづち 下嶋四万歩
孑孑の漢字に自由見て取れり 彦阪義久
指示代名詞とびかっている敬老の日 高橋 都
四五冊も積めば枕や秋灯下 田村米生
台風の眼しとどと濡れにけり 西をさむ
地動説どうでもよくて大根引 有冨洋二
毛糸だま編むつもりだった過去がある 石川節子
赤い羽根付けて真顔になりにけり 井口夏子
じやんけんの鋏で切れぬ年の暮 氏家頼一
コスモスの揺れほど饒舌にはなれず 越前春生
うるさ方黙らせてをりずわい蟹 柳 紅生
今一つお色気不足紅葉茶屋 三塚不二
いつ死ぬの孫にきかれてゐる夜寒 小林英昭
いろどりの過ぎたるを恥ぢ山紅葉 金澤 健
彼の世へと顔見世デビュー中村屋 百千草
セーターに征服したき峰ふたつ 小林英昭
闘牛の頭突きのごとし歌留多とり 柳 紅生
一軒が干せばつぎつぎ布団出る 有冨洋二
腰紐を投げしごとくに冬の川 笠 政人
冬の富士半身浴を楽しめり 久我正明
問はれればある色欲の初湯かな 飯塚ひろし
ため息の可視化現象冬の朝 山下正純
「あゝ貴女」名前出で来ぬ木瓜の花 田中早苗
寒紅のちくちくちくと刺す言葉 西をさむ
節分の鬼を匿(カクマ)ふ鬼瓦 永島董玉
どんど焼神と崇めし紙燃やす ひがし愛
受験子の横一線に祓はるる 白井道義
甘くみてノロウィルスに追ひ付かれ 高橋素子
とし玉を事業仕分けとはいかず 山下正純
霰降るいま鉄鉢があればなあ 田所國威
こんにやくに何の落ち度や針供養 今城夏枝
膝元に小町を寄せて歌留多とり 柳 紅生
早口の小鳥のおしゃべり聞きとれず 宮森 輝
春宵や恋の旧字(戀)を分解す 笠 政人
騙すより騙されたいの四月馬鹿 田村米生
孕み猫親の許しはあとまはし 小林英昭
草餅の生まれは犬の散歩道 上山美穂
春日向足の爪切り大仕事 川島智子
頬杖に顎の重たき日永かな 菅野あたる
ふらここを漕げば漕ぐほど右に寄る 工藤泰子
髪型のどうにも気になる春うらら 小泉花子
犯人は現場にもどる桜餅 小林英昭
ああ言へば斯く言ふ燕返しかな 下嶋四万歩
就活に成功卒業に失敗 高橋きのこ
悪知恵も磨きのかかり子どもの日 田敏男
蝿打ちて一茶にそむきたる心地 横山喜三郎
うららかやもしもしだけで分かる仲 有吉堅二
まんぼうの知る春愁の無重力 広瀬雅幸
潤む目で見つめ合ひをり花粉症 金澤 健
時折は力抜きをり鯉幟 飯塚ひろし
短夜を走るラジオの深夜便 藤森荘吉
端居して人生すでにロスタイム 小林英昭
マネキンも一枚脱ぎし薄暑かな 渡辺さだを
枝振りの良し悪し問はぬ若葉風 秋月裕子
ユニクロが又ユニクロに更衣 都吐夢
腹の子のはみだしてゐる日傘かな 下嶋四万歩