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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2024年2号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。
◆滑稽俳壇は今号より二十一年目に入りました!

●特選


 生き死にをまずは選り分け年賀状 /村越 縁


 ある年齢になると、季語「賀状書く」の最初の作業がこれだ。
 喪中欠礼通知のはがきと住所録を照合する時、
 「生か死か」で二分する。
 そして、いずれ分ける側から分けられる側になる。
 厳然たる事実を書いて潔い。






 昼夜が夜昼となり三が日 /稲葉 純子


 三が日は宵っ張りになり、昼間に寝ていたりする。
 これは若者に多い現象だが、不良老人にもこの傾向がある。
 昼夜逆転を「昼夜が夜昼になる」とは、ごく簡単な表現ながら
 誰も思い付いておらずお手柄である。






 お捻りに死人手を出す村芝居 / 志村宗明


 村芝居の役者に「お捻り」が飛ぶ光景である。
 斬られ 役は舞台上に倒れたまま、じっとしていなくてはならないが、
 飛んできたお捻りに思わず手を伸ばした。
 村芝居の話の筋書きよりもこの方がオモシロイ。






 ●秀逸

聞きなれぬ歌はパスして年惜しむ
どつちみち酔ふために飲む今年酒
木守柿長生きしても独りでは
裸木のスリーサイズを競ひけり
通るとき足早となる社会鍋
受験勉強認知症テストの問題の
鷹の眼となりて掴むや特売日
立ち方を忘れてよろけ日向ぼこ

市川蘆舟
阿部鯉昇
久松久子
川口八重子
柏原才子
碓井遊子
西村伸子
三玉一郎


 ●佳作

待て待てと奉行が多い牡丹鍋
煩悩が多くて追加除夜の鐘
アラームは蒲団の下に組み敷かれ
スノボーの重心恥骨尾てい骨
いつまでの床屋通ひや木の葉髪
葛根湯「湯」と言へども粉薬
すつてんころりん防ぐ蟹股雪の道
河豚に死す無念大和屋八代目
できるなら改名したい犬ふぐり
抱擁はだめよ無理よと雪女

平田 秀
髙田敏男
月城花風
早川 寶
米田正弘
森 一平
天童光宏
小泉芝雲
宇井偉郎
上田 守


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

山の端は釣瓶落としの入るところ
自己主張季語にもありて吾亦紅
鴨の池可もなく不可もなく静か
不摂生してひきなおす春の風邪
色変へぬ松強情か信念か

縄で縛らむ不法侵入の隙間風
沢庵を噛む音にある歯の自慢
竹箒ちびて頑張る落葉掃き
菊人形同じ姿勢に肩が凝る
思ひ出せない練炭の穴の数

寄り道は落葉踏む音楽しくて
甘党は押しくら饅頭も大好きさ
霜焼も今川焼も冬の季語
うとうととたうとう眠る山となる
ダウン着てダウンタウンを歩くんだ