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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2023年8号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。
◆滑稽俳壇は今号より二十一年目に入りました!

●特選


 五月雨のサミット核の傘さして /中村眞喜男


 集まったはいいが、参加の面々が核の傘をさしているんではねえ。
 雨季の国で開催するんだから仕方ないか。
 今のところ静かにさしてはいるが、荒梅雨ともなれば
 どうなるかわからないところが心配だね。






 芝居より事実は奇なり夏の狂 /小泉芝雲


 事実は歌舞伎より奇なりとしてもいいか。
 衰退気味の歌舞伎界をリードする存在が不幸な解決策を選んだ。
 生身の人間だから判断を誤ることもある。
 世の中を掌に載せて滑稽句でもつくっていればよかったのにね。






 一晩に三度の月見外厠 / 宇井偉郎


 厠に行くために起きたんじゃあない。月を観るためだ。
 俳人たるもの一晩にこれくらいは観察してもらいたいねえ。
 月見というプラスを頻尿というマイナスで裏切った滑稽句。
 「お月見が先か頻尿が先か外厠」。






 ●秀逸

一皮も二皮も剥け風光る
ぶらぶらとしてゐて糸瓜育つかな
どこまでも万緑どこまでも過疎地
腰延ばす時が休憩田植笠
ざつと見て百両ほどか小判草
硬いのか柔らかいのか毛虫の毛
鬼やんま張り合ひ夕焼かき乱す
何か言ひたげふくれ面の蚊遣り豚

柳 紅生
前 九疑
柏原才子
久松久子
藤原 紅
寺津豪佐
上田 守
西尾泰一


 ●佳作

堂々と引き籠りたる蝸牛
縁側の父子アイスクリーム頭痛
良きことについつい回す日傘かな
母の日の母デパ―トへ行きたがる
通し鴨入管局のお墨付き
熱帯夜息を殺してゐるうそ寝
雑草といふ草は無し草茂る
爺婆は犬に幼児語風薫る
リモートの下はすててこ無礼講
踊りまくるインド映画の暑さかな

田上勝清
村越 縁
平田 秀
川口八重子
平野暢行
椋本望生
曽根新五郎
龍野ひろし
稲葉純子
森 一平


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

Tシャツは歳時記にない夏の季語
切れ味がたちまち捌く初鰹
柿若葉見たくて足が回り道
見えねども夏の季語感紫外線
膝から下が恥づかしさうに半ズボン

完全無添加筍の茹でただけ
監禁を解かれ登場扇風機
天道虫だまし見事になりすまし
貧乏ゆすりしてたらいつの間にか夏
狙撃犯水鉄砲のおさな児は

咲いた日を誰かが数へ百日草
散るときも団体行動藤の房
正式な病名なのか五月病
御しがたき若さのごとし青嵐
地下道に入り片蔭の季語見失ふ