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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2020年9号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


 映らねど実はステテコオンライン /板坂壽一


  可笑しい風景だねえ。
  見えないところでは何を身に着けていても よろしいが、
  アクシデントでカメラに映る危険もある。
  「ステテ コも映してしまひオンライン」
  「素つ裸映つてしまひオンライン」 とならんように。






 尻で漕ぐ椅子の移動や春書斎 /忽那耕三


  景がよく分かる。
  立ち上がって歩けばよいものを、
  無精をして椅子に掛けたまま移動する。
  それを「尻で漕ぐ」と表現したのは実 に見事である。
  この表現は誰も思い付かなかったし、誰も句にし ていないね。 






 白蟻にいい物件と見込まるる / 小林英昭


  「いい物件」も「見込まれる」もプラスの意味の言葉だが、
  それを白蟻と組み合わせることで、
  皮肉、笑いに反転させた。
  「いい 物件」という乾いた表現に悲しさも滲んでくるね。






 ●秀逸

おおむねと梅雨の天気を予報士云ふ

ワイヤレスがウイルスに見え梅雨最中

ファミレスは家族なしの意ソーダ水

父の日の宅急便は着払ひ

土下座してゐても強面 蟾蜍(ひきがえる)

身の熟(こな)し声まで変はりサングラス

歳時記に侵入したる夏マスク

閉ぢ開き白扇口よりものを言ふ

阪根瞳水

藤森荘吉

村上小一郎

松村正文

稲葉純子

壽命秀次

和城弘志

柏原才子


 ●佳作

子沢山みな自立して父の日ぞ

骨折の腕で縄抜け更衣

いづくへや高飛びをする黒揚羽

なかんずく古典を好み雲母虫

冷奴食べて頭脳を柔らかに

母の日にあの世の妻と糸電話

更衣しても変はらぬ中身かな

猫はどんな猫かと嫁が聞く

クランボ老女ウッフンとも言へず

猫語ではニャイター猫とテレビ見る

村松道夫

久松久子

平井静江

川添弘幸

小泉芝雲

古川勝行

石川 昇

荒井 類

津田京子

田村米生


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

三尺寝部屋がせまくて仕方なく
懐かしさこみあがらせてラムネ飲む
梅雨じめりじめはいじめ のじめかとも
自分勝手に咲くのだらうかえごの花
振り下ろす棒に手心西瓜割

黒蟻はなかなかナイスバディやで
ががんぼが脚のすらりを見せつける
二枚の掌あはせてつくる水鉄砲
蔦青しレンガの家をラッピング
文芸におけるジェンダー男梅雨

夏大根太いと言ふよりふてぶてしい
アナログの風を生み出す団扇かな
保護色や柿の花にも知恵があり
ドップラー効果遠ざかる蚊の声に
手で植える田植を熱写カメラマン