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 本阿弥書店月刊誌 
「俳壇」 
より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2025年12号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。
◆滑稽俳壇は今号より二十一年目に入りました!

●特選


 逮捕まであと数ページ秋灯 /川添節子

 秋の夜長にテレビもつまらない、ユーチューブもくたびれた。やはり静かに読書がいい。もうそろそろ休む時間だが、読みかけた推理小説が終わらない。あと数ページで犯人が分かる。親切そうな隣人か、昔からの友人か、逮捕まで秒読みである。





 長き夜の寂しがり屋の長電話 /壽命秀次


 長電話は、心理的な不足を埋めるために長くなっていることが多い。話のテーマや相手の意見などはどうでもよい。ただ長くつながっていることから得られる安心感で満たされたいのだ。今後は、AIによる専用ダイヤルができるかもね。





 上座へと祭りあげられ月見えず / 田上勝清


 「さあどうぞ、どうぞ、先生はこちらのお席へ。後ろの窓から素晴らしい名月を御覧いただけます。いやあご遠慮なさらずに折角ですから時々は振り向いてください」。月の見えない上座と、月が見える下座と、どちらが特等席なんだろう。





 ●秀逸

天高し人はスマホに俯ける
向かひ合ふ名代と元祖とろろ汁
新米の価格惑わすポピュリスト
敬老日なのに主役は孫となり
百姓を極め案山子の一張羅
鳴きますと真顔の店員虫売場
底紅忌見ゆるものだけ観る目玉
生真面目に狂ったように曼珠沙華

水野高爾
阿部鯉昇
金子未完
小林浦波
髙田敏男
志村宗明
菊池 健
大石洋子


 ●佳作

頭蓋骨護り疲れて木の葉髪
夫逝きてさあこれからは生身魂
総裁選粒の揃ひし虚栗
相続の話決まらぬ夜長かな
休肝日明日に延ばして生ビール
もう九月まだ出て行かぬ猛暑かな
飲み放題は危険な遊び秋の夜
指折れど一草足りぬ秋の七草
案山子みな押しも押されもせぬ田舎者
栗拾ふはてさて誰が剥くのやら

柏原才子
ほりもとちか
細田清子
寺田秀雄
曽根新五郎
龍野ひろし
森 一平
米田正弘
内野 悠
渡辺一充


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

汚れなどひとつもあらず野分晴
三日月の切れ味雲を切り散らす
アサギマダラの愛一筋や藤袴
蚯蚓鳴く水を求めてみつからず
凝らす目に浮かぶ無月のかたちとは

夏帽子あるになぜない秋帽子
新走り檜の枡に山盛りに
灯火親しは裸電球の頃の季語
この空も多数決かや鰯雲
夜更かしをして長き夜を短夜に

きりんの首はどこまで伸びる天高し
予報士が折り畳み傘勧める秋の空
雨にも種類秋はやさしい小糠雨
手編みの手袋片つぽだけで終はる恋
蛇口ひねれば秋には秋の水が出て