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 本阿弥書店月刊誌 
「俳壇」 
より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2024年4号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。
◆滑稽俳壇は今号より二十一年目に入りました!

●特選


 注連縄で無理矢理夫婦にされた岩 /寺津豪佐


 これまで誰も岩たちの気持ちを聞いてこなかった。人間の勝手な決めつけかもしれないと疑問に思うことすらなかった。句になってみて、そういう視点があったのかと気付く。読者をなるほどと納得させる面白さ。





 手袋の個室に入る指五本 /馬場菊子


 魅力的な句にはハッとさせるポイントがある。指にしてみれば手袋の指は個室。指を擬人化したからこそできた発想。手袋でも指が分かれていないのは「ミトン」だね。一句できました。「手袋のミトンで合宿指五本」。





 あくまでもベストと言へりちやんちやんこ / 阿部鯉昇


 「ちゃんちゃんこ」は、昔の古臭い物のように聞こえる。ズボンよりパンツ、ジーパンよりジーンズ、背広よりスーツの方が若々しく現代的。もっとも言葉より着る人の体型、品格、着こなしの方が大事だけどね。





 ●秀逸

あきらかに恋のちよつかい雪の玉
人生を座り直して初日の出
剥製の熊咆吼の蝦夷の冬
裏金を隠しきったる冬館
恋奪ふ虚勢の手術家の猫
ひよつとして義兄弟かも韮と水仙
ロケットになつたつもりか揚雲雀
水っ洟拭った拳どこで拭く

柳 紅生
稲葉純子
森 一平
宮田久常
米田正弘
伊藤博康
久松久子
北川 新


 ●佳作

閏年得か損かと二月尽
きつかけは二人つきりの日向ぼこ
熱燗や話し上手に置いてかれ
静電気の不意打ちくらひ冬ざるる
艶肌と老骨冬木ならび立ち
ふんふんと耳かたむけてうららけし
一度きりの東大受験誉れらし
孫自慢病気自慢の忘年会
裸木に鷲掴みされ空の青
なまはげは隣の兄だと知つてゐる

西尾敬一
白井道義
西村伸子
金子未完
あきのさくら
神田昭次
鶴田幸男
山内哲夫
川口八重子
平野暢行


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

うまごやしあれどなぜないうしごやし
ビタミンDを足の先まで日向ぼこ
もごもごと口ごもるかに冬の雷
風花に軽さはあれど重さなし
北風はどうしてみんな向かい風

鬼の豆闇に仮想の敵を撃つ
思ひやる潤目に鰯の哀しみを
獅子舞の獅子の仕種は猫に似て
重ね着と着膨れは似て非なるもの
床の間に鏡開を待つお餅

責任逃れに使はれる季語頬被
早々とひび割れせつかちな鏡餅
単調な中にも起伏虎落笛
男に生まれ毛糸編まずに済んでゐる
落第の報告倍率をつけ加へ