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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2021年4号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


 負け組の負け方自慢おでん酒 /田上勝清


  勝つには勝ち方の、負けるには負け方の
  美学ちゅうもんがあるわけよ。
  ああだこうだと男の美学とやらを自慢し合い、
  競ってはまた負ける。そんな時には深酒しかないなあ。
  美学というよりただの強がりだからなあ。






 揚雲雀誰かリモコン操作して /髙田敏男


  雲雀が空高く昇っていく時のあの速度は、
  遠隔操作されていたのか。
  スイッチをオフにされると雲雀はすとんと「落雲雀」になる。
  遊び心いっぱいの柔らかい発想に脱帽だね。
  詩の心で雲雀の上昇を解明した作品。






 着ぶくれや彼氏探す気失せしかに / 立川由美


  おしゃれとは我慢、忍耐です。
  暑いだの寒いだのと言ってちゃダメだわ。
  つまり機能性よりも美しさが最優先されなきゃ意味がないのよ。
  なんて力説してた頃が懐かしいねえ。
  まあ人間も財布と同じさ。中身が肝心。






 ●秀逸

落ちマスク踏むに忍びずひと跨ぎ

素通りをして鯛焼に睨まれる

寒波より三波が怖い棒グラフ

大試験地獄極楽紙一重

落第に家中抜き足差し足に 

玉の輿のるのはどの子手毬つく

門限を定むべきかな猫の恋

湯船には決して浸からず雪をんな

忽那耕三

川口八重子

椋本望生

柳 紅生

柏原才子

竹村清繁

川添弘幸

稲沢進一


 ●佳作

釦ひとつ付けるを夜なべとは云はず

舌打ちを先に笹子にされにれり

こがらしは片道切符しか持たぬ 

冬将軍の顔見しものは起立せよ 

折角の福耳隠す頬かむり 

煤逃げやスマホの電源切ってあり 

夫婦喧嘩布団を叩く音に出て 

ゴミ出しのなくて不機嫌初鴉 

年賀状出すのが減れば貰ふのも 

おひねりを咥へて終る獅子の舞

馬場菊子 

松村正之 

小林英昭 

荒井 類 

平野暢行 

阿部鯉昇 

田村米生 

石川 昇 

稲葉純子

村松道夫


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

和服とは褞袍(どてら)のことでお父さん
本日の予定は日向ぼつこだけ
蓮根は抜いても掘るといふ不思議
どことなく上から目線都鳥
大方はくたびれ色の冬帽子

ゆるゆる話す湯豆腐の湯気みたい
似て非なるもの巣ごもりと煤籠り
一羽でも千鳥と呼んでめでたけれ
アルキメデスの原理で初湯あふれさす
いただいた賀状に話しかける癖

満身創痍討ち死にの喧嘩独楽
プラス志向の季語にやあらむ日脚伸ぶ
早梅になんとはなしのそそくさ感
ぶらんこを降りればゆれてゐる地球
冴返るてふ季語にある透明感