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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2021年9号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


 この暑さ十七文字に納まらず /松永朔風


  十七音に納める努力をしなくても句ができた。
  こういうのを「らくちん」と呼ぶ。
  滑稽俳句の作り方のひとつ。
  うまいこと作って見せたのは手柄であった。
  しかし、松永君、いつもこの手を使える訳じゃないよ。






 父宛でよいか帰省の送り状 /村越 縁


  父親の存在感が薄れてゆく現実が図らずも描かれた。
  「父の名」で送ってください。
  母の名で送ったなら、母は威張り父がいじけるのは明らかだ。
  父の名にすれば、父は母に内緒で小遣いをくれるから。






 結論を足して二で割る夕端居 / 坂下成紘


  夕端居の本質がこの一句にある。
  夕端居と言えども時に天下国家を論ずる大討論会に
  なることもあるからね。
  白熱の討論が喧嘩別れになったのではまずいから、
司会役のご隠居さんがまあるくまとめてくれるのよ。






 ●秀逸

奔流に飛び込み少年の脱皮

自業自得よ向日葵のガングロは

蛍に生命線を調べさす

冷蔵庫奥のチーズが牢名主

遠雷は夫婦喧嘩の予兆とも

蝙蝠の逆さま視点変えるべく

種なしのものの種切れ冷蔵庫

そこここに蚯蚓の厭世自殺かな   

鶴田幸男

稲葉純子

和城弘志

小林英昭

家永和治

野ひろし

柳 紅生

忽那耕三


 ●佳作

善人に何ゆえからむ蜘蛛の糸

可愛げの無さが売り物夏に入る

予選落ちのごとくに落ちて柿の花

止まる度水をへこませ水馬

田植え機の免許皆伝農を継ぐ

兜虫新幹線で東京へ

背泳ぎに空の青見るゆとり無し

どうしても曲がる胡瓜の無念かな

白靴を踏まれ電車に乗り遅れ

さくらんぼ芽生えよと種吹き飛ばす

村松道夫

山内哲夫

前 九疑

壽命秀次

白井道義

平野暢行

石川 昇

松村正之

市川蘆舟

中邑義継


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

これよりは自由の時間麦藁帽
スケールを云々される虹の橋
茄子の花子規の画帳にありさうな
額の花未完成とも手抜きとも
手品にも枇杷にも種があるもので

水量の調節自在作り滝
睡眠が中途で半端あけ易し
数の暴力まくなぎのストーカー
切れ味は日本刀なみ青芒
扇ぐより使ふがお洒落なる団扇

父の日は盲腸みたいなものですね
本物の革たる証拠靴の黴
万緑のミニチュアとしてブロッコリー
翡翠の綺麗山蝉のお洒落
怖ろしや鉄砲百合も鬼百合も