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 本阿弥書店月刊誌 
「俳壇」 
より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2026年3号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。
◆滑稽俳壇は今号より二十一年目に入りました!

●特選


 着ぶくれて重たき影を連れ歩く /曽根新五郎

 軽快に歩きたいところだが、寒さには勝てないからあれこれ着込んでしまう。着ぶくれて重いのは自分だけで、影に重さはないのに重くなると感じた。重くて憂鬱なのは体だけではない。作者の心理状態でもあり、影はその象徴である。





 小春日や忙中閑の閑つぶす /村松道夫


 忙しい忙しいと騒ぎ立てる人に限って大した事はしていな いものである。まして貴重なヒマを無駄につぶしてしまうよ うな人は間違いなくそうである。こういう人は、きっとこう 言うだろう。「いやあ、ヒマをつぶすのに忙しいんですよ」





 獏の餌は年末ジャンボ宝くじ / 前 九疑


 そうでしたか。食べられましたか、獏に。年末ジャンボの宝 くじは庶民の夢ですが、獏の大好物ですからね。年末まで何 も食べていないと、空腹ですぐにペロリです。今年は前もっ て宝くじをこまめに買って、満腹にしておくとよいですね。





 ●秀逸

流感の統計に我もその一人
夢語る人居て眠い春会議
二丁目の火事を気にする三丁目
ばったりと煤逃げ同士パチンコ屋
夜廻りや役員ばかり通りすぐ
よこしまな心縦縞のセータ着て
暖房を入れたつもりがテレビつく
白魚の指など無縁割烹着

渡辺一充
岩瀬幸子
奥野元喜
西尾泰一
椋本望生
月城花風
山田蹴人
柏原才子


 ●佳作

数の子やあまたの命胃に落ちる
ウォシュレットとまらず立てぬ去年今年
忘年会倒産寸前かも知れず
野球小僧がいるから強い雪合戦
熊多しみんな待ってる金太郎
鯛焼の本家元祖とチェーン店
目薬をさし初夢の夜に臨む
煎餅を齧り炬燵のウェブ句会
歳末のたんび討たれる吉良の首
トナカイの赤鼻もしや花粉症

伊藤博康
内野 悠
阿部鯉昇
平野暢行
髙田敏男
村越 縁
水野高爾
菱沼惣一郎
森下 忠
菊池ひろこ


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

靴下を脱いで新しい畳踏む
熱燗の指に耳たぶつままれる
ややこしい話題粉砕大嚏(くさめ)
年賀状減らし世間が狭くなり
御降(おさがり)の季語に敬語の過剰感

息かけて拭く初景色見る眼鏡
奥の手があるかに見せる懐手
不精髭剃りたる顎に淑気満つ
饒舌が大活躍の忘年会
伸びるだけ伸ばして食べる雑煮餅

十二月八日を知らぬ令和の子
忙(せわ)しいお人よ年賀状まで走り書き
雑談の気分よ賀状読み返し
懐かしい賀状に片付け中断す
鶏旦のわが家にも居た江戸屋猫八