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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2020年1号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  鯖雲に一本釣りのクレーン立つ /柳 紅生


  鰯雲、鯖雲、うろこ雲は、気象用語では巻積雲という。
  俳句的にはそれぞれの違いを
  「鯖雲は鰯雲より大きく脂がのっていて一本釣りに向いている」
  「うろこ雲は調理した後のまな板に空を見立てたもの」  
  としたい。






  紙とペン探してる間に冬に入る / 古川勝行


  一句の情景を想像させて愉しい。
  「逝く秋」の句を考えていて真夜中に佳句を思いついた。
  しかし、筆記用具が見つからぬ。
  時刻は午前零時となり立冬に。
  秋の句を詠みたかったのに古川君の無念いかばかりか。 






  秋天へ超高速のエレベーター / 石川 昇


  地上からは遥か遠くにあった秋天に、
  高速のエレベーターであっという間に到着。
  外の風景が見えるエレベーターだと、
  まるで空中に浮かんでいるかのよう。
  爽快感の中にある若干の恐怖感も伝わってくるね。。
  






 ●秀逸

本物のやうなサンプル焼松茸

疲れては足棒となり捨案山子

落語家は喋るな黙れ勤労日

文化の日丸は右描き零は左

栗に栗虫本日の不運とは

受診者の誰より医師の大マスク

パンジーのチンパンジーに似て愉し

子の号令に歩く練習秋うらら

小林英昭

飛田正勝

髙田敏男

西田唯士

稲葉純子

柏原才子

早川 寶

久松久子


 ●入選

もみぢ散る思ひ別々老夫婦

テロのごとスマホ広告出る秋思

人間の靴に怯える毒茸
 
栃の実を餅へと変へる魔術かな

秋の蚊の律儀に唸り打たれけり

考へてみてもわからぬ蚯蚓鳴く

童心の湧く一本の猫じゃらし

ホームラン量産のごと台風禍

鈴虫の百円籠に消費税

馬の脚前後揃はぬ村芝居

山本 賜

中村眞喜男

田村米生

小田和子

加藤 賢

稲沢進一

岩見陸二

猿田幸男

和城弘志 

西尾泰一


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

巧拙は鋏の音に松手入
一張羅の裾に綻び秋燕
まづ音で威嚇してくる秋の雷
稲雀あへて言はねど複数形
新藁のにほひくんくんかくれんぼ
左の襟の位置にもセンス赤い羽根
帰化できずラ・フランスてふ名を貰ひ
鹿たちの角はいはゆる角兵器
すたすたがとぼとぼを抜き秋遍路
爆発をするぞと脅す烏瓜
進みがちなり短日の腕時計
やはらかな話題ほくほく芋煮会
ダウン着て水面に座すや水鳥は
敏捷性欠くと限らず冬の蝿
湯豆腐を詠む類想句吹き飛ばし