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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2016年 12月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  姫君の裸を知つてゐる菊師 / 柏原才子


  「菊花展終わればすぐに脱がせられ」羨ましいお仕事ですね。
  いやあ仕事ともなれば妙な気は起らないものです。
  菊人形があって薔薇人形がないのは?
  あれは棘がありますから。
  納得です。






  ともかくも相槌を打ち日向ぼこ / 柳 紅生


  高齢のご夫婦だろうか。互いの発言内容の理解が十分ではない。
  それでも相槌は打つから双方の尊厳は保たれる
  そこに哀しい滑稽がある。
  「発言内容推定をして日向ぼこ」
  「発言の責任問はず日向ぼこ」。






  朝蝉やピカドン襲ふとも知らず / 村松道夫


  八月六日、広島に原爆が投下され二十万人が無差別殺戮された。
  そのとき鳴いていた朝蝉たちも一瞬に死んだが、
  その命を句にした俳人はいない。
  人の命だけを言うことの滑稽を
  気付かせてくれた一句。 
  






 ●秀逸

  秋暑し固有名詞が「あれ」ばかり   石田ひでお

  仲人がひとりで喋り秋暑し      金澤 健


  
なぞなぞの本に誤り涼新た      山本 賜

  
角栄を持ち上げ俺は霧の中      鶴田幸男

  
叱る子の名を呼び違ふ夏休み     竹村清繁

  
長電話切れずに秋の夜を浪費     稲葉純子

  
落武者のごと来し友と濁酒      越前春生

  
半分は泡と税金でもビール      稲沢進一





 ●入選

  昼下がり秋には秋の眠気あり     藤森荘吉

  年金で孫をあやつる生身魂
      丸山祐司

  嫌はれるほどの長生き敬老日
     松永朔風

  雁の棹疲労骨折してをりぬ
      小林英昭

  値切りたる補聴器なれば蚯蚓鳴く
   板坂壽一

  その日だけ確かに勝った開戦日
    西田唯士

  この村の唯一の財源星月夜
      横山喜三郎

  墓参り区画番号忘れたる
       阿部達也

  髪洗つても納まらぬ怒りかな
     伊藤玉枝

  別腹でお代わりをする今年米
     飛田正勝




【筆まかせ】

選者・八木健(滑稽俳句協会会長)の最近の句。「藷炊と書き里芋に叱られる」「コンビニの応対眠き夜業かな」「こほろぎの一匹なれば親近感」「秋の蚊と侮り痒い目に遭ひぬ」「迷走は人にもありぬ台風来」「本日のテーマは味覚豊の秋」「枝豆を食ふ上品に限度かな」「新涼の水新涼の蛇口より」「重陽を重傷と読み菊日和」「湯ざめして叱られてゐる背中かな」「手土産はありませんよと空つ風」「気短かや日短なればなほのこと」