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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2017年4月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  非常口の男逃げゆく寒さかな / 阿部 昇


  非常口のマークの「逃げる男」にヒントを得ての句。
  通常、寒いぐらいで非常口を使うことはない。
  しかし、あのマークの男は寒さから逃げているのだ。
  それくらい寒いのだと寒さを強調して
  「ワザあり」の一句。






  青天の氷柱の刻む水時計 / 柳 紅生


  所謂「漏刻」ですな。
  軒氷柱が気温の上昇で溶けている。
  それを「水時計」と見たんだね。
  なるほど氷柱の長さで時刻を知ることが出来る。
  太陽熱利用のエコ仕様の時計だが、
  溶けてしまったら、はてなんどき。






  初写真一人が横を向きにけり / 竹村清繁


  俳句の新鮮さは「想定外」にある。
  それは一つの風景に「事件」を発見したときに生まれる。
  「一人が横を向いていただけ」
  という写生の可笑しさ。
  滑稽句の手法のスタンダードになるだろう。
  






 ●秀逸

  雪女郎の飛び出してゐる喉仏    柳村光寛

  よく喋る奴が苦手や懐手       越前春生


  
綿入で育ちいささか軟弱に      山本 賜

  
一汁一菜こそが贅沢三が日     稲葉純子

  
ウインドウの分かつ貧と富毛皮店  荒川 清

  
トランプの嚔に日本風邪をひく    土谷敏雄

  
温泉にや入れぬと言ひ雪女     坂根瞳水

  
初夢や人には言へぬことばかり   山内哲夫





 ●入選

  神様に先に居留守を使はるる    小林英昭

  
栄転と左遷が好きな弥生かな    寺川銀次郎

  ある所にはある鯨料理かな     松永朔風

  昔日の恋の抜けがら木の葉髪    仁木 勉

  毛皮着て折角の胸隠れけり     加藤 賢

  乱痴気に震度四足す花筵      横山喜三郎

  愛嬌の猿のお辞儀の初稽古     藤川蒼樹

  左義長に聖樹をくべるのは止しな  板坂壽一

  強面は生まれつきなる獅子頭   畑 正将
  
  像の首を重機が捥ぎ了る   金山敦観






【筆まかせ】滑稽俳句協会会長 八木健 近詠

ハンドクリーム皸の足につけ 甘噛みを知らぬ子猫に甘えられ
騒音の一歩手前の百千鳥 雀の子瓦の鬼を怖がらず
惜しまれたとても逝かねばならぬ春 安あがり花見兼ねての送別会
口約束に卒業の日のまた会おう 花辛夷食べたら辛いかも知れぬ
貧乏ゆすりに付き過ぎの季語隙間風 飛び発つつもり連翹に羽の文字