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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2021年7号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


 来賓に上座と下座入学式 /市川蘆舟


  どなたが来賓かで学校の格が決まるからなあ。
  難しいのは席次だよ。市長を一番にしてたのに
  県知事が駆け付けて最上位に。
  一番下座だった滑稽俳句協会会長がはみ出て一般席に降格。
  滑稽の価値が分かっとらんよ。






 燕らに借家の軒をまた貸しす /石川 昇


  ここだけの話なんだが不動産を貸してるんだよ。
  たいした広さじゃあないけど、まあ私が家主みたいなもんでね。
  ただ、その物件は借りてるから、いわゆる「また貸し」よ。
  店子が気を使うから内緒にしてくれよ。






 晩学の海へ船漕ぐ春灯下 / 志村宗明


  今年の一月に百六歳で亡くなった山口県の長岡三重子さんは、
  リハビリのために八十歳で水泳を始め、
  世界記録を九十五歳区分で七本、百歳区分で十八本も樹立。
  船を漕ぐのもいいが、スイミングもどうですか。






 ●秀逸

海中を急ぐ海月の三度笠

香水の効き目に頼るデートの日

五月はや土手に寝転ぶランドセル

孑孑の浮き沈みして世に出たる

短冊に窮屈そうな櫻の字

蛍狩り何も起こらずまだ独り

悪筆を個性と褒めて新社員

一病でつながる母子桜餅  

小林英昭

田村米生

前 九疑

柳 紅生

馬場菊子

柏原才子

村越 縁

松村正之


 ●佳作

赤止まれ青は進めで黄タンポポ

身ごもりてつなぎとめたり四月馬鹿

金銀の蠅飛び回る五輪かな

葉を剥がす所作も馳走の桜餅

いつ来てもバーゲンセール四月馬鹿

武者人形に監視されたる爺の酒

甘茶仏カメラ目線で立ちにけり

解せぬ句を集めし句集四月馬鹿

完熟トマト半額セールに赤面か

鼠捕る本分忘れ浮かれ猫     

稲沢進一

村松道夫

髙田敏男

川添弘幸

北川 新

壽命秀次

田上勝清

天童光宏

稲葉純子

久松久子


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

髭を生やして初蝶の生まれたて
足が出てオタマジャクシがむず痒い
存分に寝たからこその山笑ふ
初蝶を見たよと秘密めいた声
唾で蔵建てるつばくらすすいすい

俳人に吝嗇(りんしょく)多し春惜しむ
入の字が尻切れのまま鳥雲に
汐干狩干潟は海の楽屋裏
歳時記の目立たぬとこに梨の花
朝堀の筍土間に威張らせる

夏蜜柑専用硬くて太いゆび
若竹はさきほどまでの筍で
閉ぢていたわけでもないに海開き
ステテコと相性がいい冷奴
蝉穴を覗けど地球の裏見えず