| お問い合わせ | ご利用にあたって | 

ホームへ

 


 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2020年11号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


 からつとは揚がらぬ油蝉の声 /小林英昭


  このところ「昆虫食」がブームで、
  蝉を食べるイベントが開かれたりもしている。
  だけど七年も地中で頑張ったのを
  食べちゃ可哀そうだね。
  俳人は、声だけをから揚げにする程度でよろしい。






 宅飲みに付き合ひ給へ酔芙蓉 /米田正弘


  コロナ感染拡大防止のため、
  夜の街に出るなとの指導があり「宅飲み」が増えた。
  オンライン飲み会なども盛んに企画されている。
  米田君は庭の酔芙蓉に声をかけたらしいが、
  酔芙蓉の彼女はすでにほろ酔い赤ら顔。






 反骨の鮭の打たれて鼻曲がる / 和城弘志


  「鮭の鼻曲がり」は、オスが成長してメスを
  誘惑するようになった証拠。
  いわゆる第二次性徴ということだが、
  俳句は科学ではない。
  気骨のある鮭が意見の違うオスと
  喧嘩したと考えた方が楽しいわなあ。






 ●秀逸

しのび来る吾子は殺し屋水鉄砲

すいつちよの草に化けては驚かす

東京や蹴る石もなき秋の暮

理科室の標本のよう夏痩せて

水母浮く電池の切れたやうにかな

吉吉と天牛(カミキリ)凶の音知らず

御診立てもアクリル板の簾より

帰郷せし吾に祝砲威銃

早川 寶

久松久子

竹村清繁

小倉乃里枝

髙田敏男

稲葉純子

森 泰博

平野暢行


 ●佳作

強盗も感染予防マスクして

お迎えは門前払ひ生身魂

とはいへど無一物なり生御魂

近道は袋小路の玉の汗

噴水の空を目指して風となる

日盛りを転ぶが愉し草の罠

炎天を来て袴下まで一気脱ぎ

風神と奪ひ合ひたる麦藁帽

ゆうれいがおひねり拾ふ村芝居

OBの会は昼から生ビール

忽那耕三

西尾泰一

宮田久常

白井道義

稲沢進一

村上小一郎

壽命秀次

柳 紅生

柏原才子

石川 昇


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

鳴き止むと言はず上がると蝉時雨
キャベツ好きニックネームが青虫で
買い物の付録のやうにバナナ買ふ
定年後ずつとないのが夏休み
夕焼と小焼の狭間にある真暗

この夏の遺品のやうに花火殻
カレンダに中止と延期夏終はる
二枚めは値打ちが下がり桐一葉
立秋や寝ていた秋がすくと立つ
この時期は薔薇を活けよう秋葉原
*秋ハバラ

蜩は声だけのもの見ん見ん見ん
つくづくと考へてゐる法師蝉
生育場所におよその見当鉄道草
下駄音を足してにぎやか星月夜
流れ星私ひとりが見損なふ