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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2022年1号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


 散弾銃のごとく通草の種を吐く /松村正之


  アケビの種の特徴を実によく捉えている。
  種の吐き方を散弾銃に例詠みも憎いねえ。
  佳句を読むと良い刺激をいただく。ひとつ挑戦しよう。
  「ハモニカを吹くごと咥え玉蜀黍」
  「若鮎のつもりがトドの泳ぎだと」。






 布施の額が諍ひの種盆用意 /阿部鯉昇


  俗で下世話な世界だが、人間の真実である。
  俳句は庶民の文芸。とりすました綺麗なだけの句はつまらん。
  季語の「盆用意」がどっしり据えられているから
  川柳とは言わせない。やはり季語の存在感は偉大だね。






 残りたるアベノマスクに保管料 / 松永朔風


  アベノマスクは、八千二百万枚余りが配られずに倉庫に眠ったまま。
  その倉庫保管料は六億円とか。マスクに「アベノ」が付くと季語感
  が薄いが、事実をありのままに書いて滑稽句になっている
  ところがいい。






 ●秀逸

秋の空傘と杖との二刀流

止むを得ずへそくりを出す懐手

枯蓮のもたれ合ひたる共倒れ

ひとしきり受賞自慢の今年米

椋鳥やとかく小者は群れたがり

捨案山子滅私奉公したるのに

屁理屈に納得させられたる夜長

草の実や今日はどの服狙おうか        

北川 新

柳 紅生

柏原才子

米田正弘

小林英昭

平野暢行

田上勝清

平井静江  


 ●佳作

いちはやく新米食ふは雀かな

助け合い赤い羽根とて鳥受難

蓑虫や世間知らぬも幸せか

頭を打たれても怒りは湧かぬ木の実かな

口べたの集まる店やおでん酒

森を見ず木を見てをれば初紅葉

石投げて割つてみようか冬の空

指揮者など無用ぞ虫の合唱団

秋の蚊を詠んでやったに首刺され

山門を顔パスの鹿くぐりけり   

志村宗明

髙田敏男

龍野ひろし

岩見陸二

永井貴士

藤森荘吉

日根野聖子

七海康光

山内哲夫

板坂壽一   


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

うそ寒の朝ですほんとなんですよ
おをつけてお風邪を召しませぬように
スケッチのコスモスじつとしていない
ずたずたの徹底的や破芭蕉
のんびりが退屈となり小春の日   

ひよんの笛吹いて孤独を楽しめる
迂闊にも渋を抜かれて柿甘し
擬(もどき)とは不本意の名ぞ梅擬
自然薯を求めて粘る道の駅
実あけびのぱつくりに鳥が来てぱくり   

種茄子となり色艶と縁を切る
慎重は新米を炊く水加減
新走慌てて喉をつんのめる
釣瓶落しの太陽海といふ井戸へ
指揮官がゐるとも見えず鰯雲