| お問い合わせ | ご利用にあたって | 

ホームへ

 


 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2018年10月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  予報士が服まで選ぶ梅雨の晴 /永井弘子


  今日は久しぶりの快晴。
  気温がぐんと上がりそうです。
  とここまでならいいが半袖でお出掛け下さいときた。
  いずれは色や柄、素材もアドバイスしてくれるだろう。
  しかし、「シャツくらい自分で決めたい梅雨の晴」。






  虫干が得意断捨離下手な人 / 堀川明子


  断捨離をするつもりで広げたのに捨てきれず、
  虫干ししただけになっちゃった。
  ただそれだけの事を「得意」と「下手」とに
  対比させた第三者の眼が佳句を生んだ。選者も一句。
  「虫干が断捨離兼ねぬめでたさよ」。 






  終活や蛇身ひとつで穴に入る / 柏原才子


  蛇は余分なものを一切持たずに巣穴に入り冬眠をする。
  あんなふうにさっぱりと生きられたらと思うが、
  なかなかそうはいかないもの。
  それに、断捨離も終活も上手くできない人の方が、
  いい滑稽俳人になれる。
  






 ●秀逸

一夜干になりかけてゐる熱帯夜 柳村光寛
モノクロの虹の写真の虹らしさ 荒井良明
残業の遅々と進まぬ遠花火 柳 紅生
リニアモーターカーほど舟虫の時速 稲葉純子
一人居やパックのままの冷奴 石川 昇
父の日や泣き虫なりし昔伏せ 西田唯士
蚊帳を吊る家はなくなり蚊帳吊草 山本 賜
雲の峰太郎の家を覗き込む 川添弘幸

 ●入選
継ぎ足しの尾とすぐわかる蜥蜴かな 竹村清繁
寝ぬ嬰にママの団扇が舟をこぐ 小林英昭
味よりも値段が話題鰻の日 玉置泰生
強運か蠅取テープに残る脚 板坂壽一
まつすぐと曲る胡瓜や人もまた 石田ひでお
秋の雲腹を空かせば旨さうに 小原哲哉
まづ爺が撃たれてやりぬ水鉄砲 市川蘆舟
背負はれて後ろ向きの児山開き 高柳しずか
冷し酒話だんだん熱くなり 田村米生
天近くその分暑き屋根の上 野尻賢二

【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

梅雨の傘働き方改革で日傘にも 予報士の顔に泥塗る戻り梅雨
肩幅のなくて甚平よく似合ひ 地獄耳使ひこなして端居かな
夏痩をして凹凸を失へり プレゼントなにかと思へば蝉の殻
メニューなど要らず即座に生ビール うな重の松竹梅の竹選ぶ
丹念にひねくれてゐる文字摺草 噴水のサービス飛沫のお裾分け
猛暑日の日本列島反り返る
ファッションに分類されず素つ裸
髪の毛を噛むから嫌ひ籐寝椅子
デザインはいつもおんなじ虹の橋
ウクレレにあるなり夏の季節感