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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2022年12号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。
◆滑稽俳壇は今号より二十一年目に入りました!

●特選


 三円の袋を拒む豊の秋 /曽根新五郎


  環境のためとはいえ、これまで無料であったレジ袋にわずかでも支払いをするのは悔しいというのが本音。自然だけを詠んだ句が物足りないのは今を生きている生活実感が出ないから。ためらわず今を描くべし。





 川底の石見せたくて水澄めり /平井静江


  「水澄む」が秋の季語だが、なぜ水が澄むのかを言った俳人はいない。そうだったのか、石を見せたかった のか。やはり滑稽句は擬人化が秀句となる。選者も一句。「澄む水のやさしさといふ水心」。





 リモコンへ匍匐(ほふく)前進炬燵出る / 柳 紅生


  リモコンを手にするために這い出すことを匍匐前進などと大袈裟に言うのが可笑しい。匍匐前進は軍隊で敵に見つからぬようにするためのものだが、未練がましく足だけでも炬燵に残そうとする姿も可笑しい。





 ●秀逸

名月を観るに難渋下層階
充電の残りを使ひ秋の蝉
脱ぎ捨ては我にもありて蝉の殻
赤紙を手に秋愁のロシア国
生きてれば腹は空くもの豊の秋
来年の出番は未定捨案山子
もう誰も戻らぬ村や木守柿
紅葉狩道を迷つて仲が知れ

越山勝久
築史善正
久松久子
松永朔風
村上小一郎
村松道夫
宮田久常
柏原才子


 ●佳作

ひとところ焦げてゐるなり鰯雲
秋晴の国葬あとの空愚図る
餓鬼大将のままに古びて生身魂
首もたげ目のあるごとし蔦の蔓
秋刀魚焼く民の竈かまどはIH
左巻きと言はれ台風暴れだす
貴婦人もラムネ飲むときやラッパ飲み
真ん中はマドンナの席敬老会
秋簾越しにスマホの諍ひ聞く
押し出され元に戻れぬ心太

田上勝清
角谷勝也
稲葉純子
中邑義継
森 一平
髙田敏男
壽命秀次
平野暢行
村越 縁
稲沢進一


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

なんにでも余生のあれば秋団扇
ひつ掻き傷台風一過の列島に
蛇穴に入らざるを得ぬ気温かな
秋のこゑ耳の後ろで聞きわける
出来秋の農家をさんづけテレビ局
       

星々のぶつかり合うて銀河濃し
庭に立つ虫聞く耳を用意して
天と秋季語に高さを競ひゐる
鳳仙花得意の技は居合抜き
本日の予報は晴で虫時雨

星々は水底の砂銀河の夜
無垢の空ひとつ残して台風過ぐ
鳴き声が虫の名となりすいつちよん
転がして飼ふ鈴虫の二三匹
夜長楽しむ同じ話をくりかへし