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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2018年12月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  元車掌はさみ鳴らして松手入 /小林英昭


  車掌がはさみで切符を切っていた時代があったねえ。
  その時代の車掌とあらば「空ばさみ」もさぞ巧かろう。
  定年後も現役時代と同じだから慣れた手つき。
  選者も一句。
  「ざるそば食ふ手つきがよろし元落語家」。






  そいつには寄るな流燈に声をかく / 尾関凍歩


  物語性がありますね。思わず声掛けした流燈は、
  妻か愛人だろう。「そいつ」は恋敵に違いない。
  読者の想像は、それまでの人間関係や、
  この後の展開にまで及ぶ。選者の想定句。
  「相寄るや視界逸れたる流燈は」。 






  三階へ買い物運ぶ体育日 / 柳  紅生


  老化を防ぐには、まず足腰を鍛えること。
  体育の日だけラジオ体操しても駄目。
  普段から、ちょっとした負荷を体にかけるとよろしい。
  三階へ荷物を運ぶのはいいね。
  紅生さん、体育日でなくても続けてくださいよ。
  






 ●秀逸

希林逝く死も日常と爽やかに 高柳しずか
里帰りすれば捕まり秋の鮭 堀川明子
揚げ花火掛け声玉屋天ぷら屋 北川 新
赤い羽根通行証のやうに付け 田村米生
新酒入荷と店主の自筆トイレにも 板坂壽一
乳房などちらとも見えず秋更衣 加藤 賢
逆上がりの臍に見せたる天高し 石田ひでお
古希過ぎて働かされる文化の日 宮田久常

 ●入選
新酒酌むひとりうるさい奴のゐて 竹村清繁
季語の枠はるかにこえて扇風機 横山喜三郎
生身魂最期の賭けとビットコイン 久松久子
値の張りし具材が逃げる芋煮鍋 鈴木基之
義理で出かける新涼の絵画展 柳村光寛
裸体画の臀を塗り足す神の留守 柏原才子
宇宙開発よりも台風とめてんか 松永朔風
予約には妻とありしが秋の宿 桝野雅憲
ここだけの話の大声生身魂 稲葉純子
かまきりの子にして睨み効かすなり 越前春生

【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

新聞がアイマスクてふ昼寝かな 平成に駆け込み台風次々と
すとんとは産声のこと心太 ほろ酔ひの色のほろほろ酔芙蓉
動画撮影しても静止画枯蟷螂 公然の暴力神輿のぶつけ合ひ
山盛りは表面張力新走 擬人化で糸瓜の腰のくびれ言ふ
草だけを食べて馬肥ゆ不思議かな 包丁の宣伝すかすか大根切る
飲みながら酒の害説く敬老会
贅沢感コンビニ弁当の新米に
神様に整頓のわざ鰯雲
鳥威しのCDロック調で揺れ
病葉と呼べば詩となる葉っぱかな