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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2021年6号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


 春眠の大往生へあと一歩 /田上勝清


  作者の意図を代弁してみようか。
  「やあ良く寝たよ。春眠の候だからなあ。
  しかし、あと一歩で大往生となるとこだった。
  臨死体験というのか、お花畑が綺麗だったよ。
  でもね、もっと迷惑かけたくて生還したのさ」。






 蠅の如行く先々で揉み手かな /忽那耕三


  お気づきだろうか。この句は「蠅」を詠んではいない。
  蠅のように揉み手をする人間を詠んでいる。
  世知辛い世の中を忖度しながら這い上って行く様子を彷彿。
  読者の中には、あの人のことだなと人物が描かれる。






 崇めても花粉を飛ばす御神木 / 平野暢行


  神様が平気で悪さをするのを指摘したところが滑稽。
  ひと昔前の俳人なら御神木の欠点を指摘するなんてとんでもない。
  崇め奉ることを句にしただろう。
  しかし、令和の俳人は客観写生をし、裏切り構成で滑稽に。






 ●秀逸

期限切れあれこれ煮込み春惜しむ

結局は独りが極楽春炬燵

行間を読めばかすかににほふ春

浮かれ猫別れはすぐにくるものを

垣手入れできてできない身の手入れ

木々芽吹き根も葉もないと言ふ噂

入学児ひとりに市長組合長

花見には行くな来るなと諭す知事  

柳 紅生

久松久子

小林英昭

宮田久常

田村米生

志村宗明

和城弘志

松永朔風


 ●佳作

新社員大器晩成とも見えず

薇も蕨も知らず里住まひ

野遊びの添乗員に選ばれて

二人居に作り過ぎたる懸大根

亀鳴くと思へば楽し耳鳴りも

泣き声の連鎖反応入園式

寝かさうとすれば寝たふり万愚節

ごみ捨ててストレス捨てる大掃除

燃えるよな恋ご法度の雪女

ハチ公のマスクは犬のためなず     

石川 昇

米田正弘

川添弘幸

柳村光寛

柏原才子

村越 縁

稲葉純子

藤森荘吉

壽命秀次

天童光宏


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

水温む分だけ地球温暖化
北窓を開けば思ひ切り世俗
春帽子こないだまでの冬帽子
スカートの丈のわずかに春めける
花粉症ならばお上手鼻濁音

料峭(りょうしょう)と呼ぶ難しい春の風
絵心のあり飛び石の落椿
盗み食ひされて減りたる雛あられ
思ひ切りホーをのばしてケキョを足す
手にとればほくほく喜び春の土

巣づくりの最中燕の新婚さん
そろそろは開花を期待する言葉
ガム噛んでニセの風船楽しめる
昆虫と言へども刺客庭の蜂
理解して納得できず蜃気楼