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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2021年11号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


 風来坊改札出れば月の客 /髙田敏男


  多忙な一日がやっと終わった。
  改札を出れば仕事から完全に解放される。
  気分はサラリーマンから風来坊に変身。
  月のお出迎えとは、なんと贅沢なことか。
  ゆったりと風流を味わいつつ月見客気分で帰るのである。






 マスクには鼻毛を伸ばす副作用 /忽那耕三


  自分だけが見つけた可笑しいことを伝えたい。
  それが俳句の原点で、滑稽句には必須の条件である。
  いつもマスクをしてるから鼻毛が伸びていることに気づかない。
  それを「伸ばす副作用」と誇張した可笑しさ。






 靴ベラを居合抜きして油虫 / 柳 紅生


  滑稽句は構成のテクニックが肝心。
  靴ベラというありふれた物を持ちだしてどうなるかと思いきや、
  居合抜きという緊迫感溢れる状況に置く。
  そして実は油虫をやっつけたんですと謎解きをして巧み。






 ●秀逸

とんぼうに貸してわが膝動かせず

安直な宇宙遊泳ハンモック

果てしなき季語は句の芯青りんご

蝉鳴いてこの世やたらと騒がしい

情なや蚊にも好かれぬ歳となり

縄張って松茸山をばらしけり

夜這星監視カメラを横切れり

残りても福とはならぬ残暑かな       

七海康光

村松道夫

市川蘆舟

白井道義

久松久子

柏原才子

田上勝清

松永朔風     


 ●佳作

蚊を打つて吾を吾が血で汚しけり

偏食はすつかり治り帰省の子

ほめちぎりたちまち空にする新酒

飛び入りの遂には本気盆踊

傾いて案山子なかなか倒れざる

秋出水天の水甕底抜けに

蜘蛛の囲の作業工程見て飽かず

水鉄砲嫌がるところ狙ひ来る

クラス会杖を見せ合ふ生身魂

迷路めく路地を熟知の夏の蝶  

早川 寶

平井静江

小林英昭

平野暢行

稲沢進一

西尾泰一

和城弘志

小泉芝雲

腰山正久

竹村清繁  


【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

掃除機を隠して仕上げ夏座敷
大きいと苦情も言へず枇杷の種
閑人はこのゆびとまれ夕端居
朝顔の花を数へる几帳面
ふうはりと泳ぐ海月に悩みはあるか 

店頭にさらし者めく大西瓜
毎年のことよ秋は突然現れる
割り箸を口で捌いて走り蕎麦
いちばん赤いクレヨンはどれ曼殊沙華
じやれるからじやらしたくなる猫じやらし 

桐一葉季語の自覚はなくて散る
一升瓶に点滴糸瓜水つくる
秋風の通行を許可窓開けて
庭に立つ虫聞く耳を用意して
星屑の余生としての流れ星