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   2010年3月の滑稽句

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青山桂一
凩やドミノ倒しのバイスクル
いまどきは火炎銃にて草を焼く
蓑着けし川の漁師か冬の鷺

秋月裕子
降る雪に生きてればこそ苦楽あり
道づれの歴女のなさけ初詣
時間割立てて忘れて冬ごもり

麻生やよひ
アルキメデス気分初風呂溢れさせ
陽に勝てず根性なしの雪だるま
成田屋の代々ぎよろ目初不動

足立淑子
ナイーブな男の横で春惜しむ
竹の秋おしやべりいつまでも続く
そう言えばエープリルフールだつたのね

有冨洋二
大法螺に欠伸で返す日向ぼこ
犯人は追い詰められし春の泥
風なくて柳水面に突き刺さる

有吉堅二
マスクしてなくて世人に怪しまれ
ふぐ汁にどうぞと先を譲り合ひ
猫も顔洗ふはバレンタインの日

安藤淑子
女正月五人合わせて四百歳
癇癪の爺の手裏剣みかん飛ぶ
訪るは恋猫ばかり閑居の庭

飯塚ひろし
豆を撒く程度で鬼が出て行くか
春の服まとへる犬があと先に
ジーパンに大きな穴や春の風

井口寿々子
初詣梵鐘の長きひびきかな
目つむれば楽しきことのみ年惜しむ
ボロ市や着るあてもない着物買ふ

井口夏子
ヒレ酒の並みなる酒が上特級
風邪熱を足抜けさせて平熱なり
仕合せやああ仕合せの炬燵かな

池田無了
遠足のおにぎり小さし肥満の子
春の宵別れた影がまたもつれ
入学式まずは神童の顔貌

伊藤浩睦
一瞥で偽物とされ春星忌
近づけばとんだ婆なり裘
越前と付いても蟹と海月の差

稲沢進一
薄氷地球温暖化に負けず
百円のかすかな期待初みくじ
恐ろしき体重計や着ぶくれる

井野ひろみ
修院や冥想の庭息白し
暗黙に畑に人居ず三ケ日
行列や賽銭箱にたどり着き

今城夏枝
恋猫となり今宵の三毛猫は
猫柳一皮むけて村を出る
寒木瓜や言葉のひとつ棘をもつ

越前春生
遺言の簡潔すぎて山笑ふ
雪女郎の正体あばく女の眼
序列なきうからの集い目刺焼く

奥脇弘久
風邪の神歳神なりと鎮座する
新春に曖昧模糊とアイスノン
微熱の身屠蘇は香のみで邪気祓ふ

岡部一兆
子は元気バケツに蟇の入る如く
侘寂を抜いても旨い寒の鰤
政治家の髪の黒々狸汁

笠 政人
冬凪や鴉のとまる風見鶏
小春日の場末鴉の悪だくみ
実十両買ふや値の五百両

可知豊親
そつ気なき女医の問診春の風邪
恋猫に一張羅着せ送りだす
減らぬ踏絵櫂さん譲つてくれないか

加藤澄子
日本列島に寒気到来地震までも
鶺鴒に案内をされて庭をゆく
電飾にがんじがらめにされ冬木

加藤 賢
若く見られ席譲る破目冬日和
流されてゐるわけでなし浮寝鳥
貧すれど鈍せぬがごと枯木立

川島智子
福笑ひ今年も殖ゆる笑ひ雛
母の愛総理存ぜぬ民寒し
寒温し滝なす如き象の尿

北村真佐子
最終バス足踏みで待つ寒の月
雪雲や最後の青を食いつくす
寒三日月牙出しかねるビルの谷

久我正明
すきま風長▽に入り来る
裸木や八股九股タイガーウッズ
縦縞のタイガース暴れて寒気団

草薙一朗
恋の繪馬受験の繪馬と神忙し
松過ぎの雑誌はやくも二月号
遠足や二里や三里は河童の屁

工藤泰子
仕分けしてばらまかれたる福寿草
口だけは休んでをらぬ女正月
万両をわつさわつさと揺らしけり

倉方 稔
もの言へばラ行もつれる寒最中
朝寝とは三日のあらずけふも
探梅行密会のごと妻とゐて

黒澤正行
恋猫のまぐわい見つつちと男
老医師も負けずおとらず着ぶくれて
残雪に立ちションベンで書くへのへのも

黒田忠一
MRI撮つて新年迎へけり
新年会病気の話で酒交わす
恋の猫昨夜のことは知らぬ顔

小杉 隆
友傘寿ふんばりおりぬ姫始
合婚のシャコとサボテン身を染めて
勝力士見下ろされてるインタビュー

桜井宇久夫
百円の餅よく伸びる雑煮かな
直立の大礼服に御慶かな
松過ぎや消費期限のみな切れて

佐藤古城
井守の粉かけて女の様子みる
おかめ顔がいつち売上ぐ夜店哉
阿と吽で似た夫婦ひめ始め

佐藤義子
木の芽の目私歩くと流し目よ
地吹雪で前の車とかくれんぼ
ビデオの続き気になる暇正月

佐野萬里子
パソコンで二重になつた年賀状
住居表示間違つても着く年賀状
父は去年遷化と寒中見舞来る

佐野ゆきこ
餌あさりゴミからゴミへ旅カラス
寒空に雀枯れ木の花になり
夜道行く影法師が道案内

澤田蔦恵
大トラにブレーキきかず新年会
歌留多とり恋の世界へ踏み込めり
年賀状犬もいつしよに年をとる

柴田真一
百貨店百円ショップに凍え込み
着ぶくれてブレーキ効かずボロが出て
不況風袋に入れて豆を撒く

清水呑舟
ひと言が云へぬ労り根深汁
三寒の我に四温の妻の檄
西行に花良寛に貞心尼

首藤虎男
口おごりチャックカケシ一文字
寅ッキーそこのけアカン干支の座に
我が子より孫に気待するジジとババ

壽命秀次
秘め事も知らん振りする炬燵かな
爺の無い袖に潜みしお年玉
抜け出たい炬燵に足を引つ張られ

白井道義
取り敢えず異論はさまず日向ぼこ
ただ単に無精な男懐手
湯豆腐や消費期限を過ぎし歳

杉村福郎
芝浜を聞くほろ酔ひの大旦
千両も万両もある四畳半
囲うはれて花唇の燃ゆる寒牡丹

鈴木和枝
願い事してるから雪雲よどいておくれ
神がほんとうに居る急な階段
今もわからない人参の赤を買う

鈴木 清
間に合つた水平線に初日の出
初詣でこの日ばかりは神信じ
節分や拾う人無く豆を噛み

鈴木 榮
静かさや一人羽子つく宇宙人
疣治療レーザーメスの雪女郎
妻にぎる家計の仕分け春を待つ

高田敏男
役者絵や羽子板市で見栄を切り
寒鯉も慌てて跳ねる料理茶屋
薄氷や夜の銀座の厚化粧
高橋真紀子
参拝客の波に入りけり残り福
お飾りのトッピング付け戎笹
御降や比叡の尾根に薄化粧

高橋 都
猫の手を借りてもみたが大晦日
磨いても中身変わらず初鏡
書初めは三年続き「ダイエット」

高橋素子
熱燗やたうとう本音おびき出す
猫殿が一番怠惰春炬燵
我を拾ふはどの神ならむ七福神

高松雄三
朝寝して雑煮のブランチ食べにけり
定年やいつもと違ふお元日
賽銭は紙だのみなり初詣

滝沢 安太郎
絶筆の賀状もつれゆけ千の風
冬の寺日溜りの衆何を乞ふ
値切られて蝋梅未だ綻ばず

田代陽光
着ぶくれてなほ威を張れる老亭主
春風や孔子先生大男
ぷあーぷあーと京劇歌ふ春の宵

田中章子
七草を数ふる癖の姑をり
弾初の「猫ふんじやつた」高らかに
なんちゆうか己を知らぬ嫁が君

種谷良二
女正月今日も女房ジム通ひ
光陰はあなおそろしやはや二月
豆撒きや街中鬼で溢れをり

田村米生
来客に秋波を送る炬燵猫
初夢のクライマックス尿意くる
初鏡いまだに親を憾みけり

飛田正勝
末の子の末つ子が先づ泣初
夫三度妻は七度や年忘
旧臘の没句べた打ち初便り

戸谷笑子
巨乳女の何やらゆかし懐手
バイキング据膳もよき旅始
富士山も化粧してをり初鏡

永井一朗
大江山眠る鬼ども酔ひつぶれ
年を越す貧乏神に付き添はれ
明日からは元の呼び名ぞ嫁が君

永島董玉
猫舌の漢を笑ふ嫁が君
二日はや人には言へぬ二日酔
鳴龍になかれて参る女正月

西 をさむ
初みくじ恋は叶うと言われても
生きている事の立派さ日向ぼこ
使い捨てカイロに私されてます

原田 曄
銀行のATMにマスクの列
なやらひや金堂裏に鬼談笑
橙もてばばがお手玉してみせる

彦阪義久
草食系男子を狙う雪女
寒卵その夜効き目を確かめる
天狼がどれかも知らず五七五に

久松久子
添作して芭蕉の句とや山笑ふ
メーク濃いクローン狸の梅田駅
到来の下ねた葱と客に出し

日根野聖子
タイムカードの音の眠たげ初仕事
初詣祈願項目仕分けして
受け答へよそゆきとなり成人日

藤岡蒼樹
藁屋根や犬猫同居の嫁ケ君
末裔の木綿衣捏ねる粟の餅
百枚の五通白筆の年賀状

藤森荘吉
句にならぬこと苦にならぬ今年かな
売初や大店小店肩並べ
年新たため息なんかついちやだめ

藤原セツ子
新玉や脳トレ家事を始めねば
歌口づさみ介護の一日餅を切る
朝食と漁るけんけん寛鴉

二神重則
年明けて笑えぬ鬼の水事情
奈良の春金になるなり法隆寺
冬ごもりたずね来るのは鐘一人

坊野留吉
鎌衣イタチ飼育してゐる山の神
雪雲やひむかの空を豊後落ち
就活は日本海側寒気団

前川敏夫
新婚にそよ風のごと隙間風
桜鍋食べすぎ蹴とばされたる胃
着ぶくれてどれもブランド品ばかり

松尾軍治
元日やヒゲをあたりて夕食へ
俳句はヤメロと出ており初みくじ
ジッパーがあいているゾと出初式

松田吉憲
着膨れし婦人生れる選者席
昼までの何と短き三ヶ日
客間には妻の悪友日脚伸ぶ

丸山紘一
老い二人だんまりのまま屠蘇交はす
初能会人生無常を謡ひをり
春立つ日買い溜めマスク仕舞けり

三木蒼生
美女エスコートして成人の日の野獣
癌に顔つけられてをり温め酒
冬眠のくちなは錦飾りをり

三塚不二
電池切れ佳境に入りし初電話
千両や網を張れども盗まれる
白菜の芯に越冬する奴め

三橋一笑(三橋真砂子)
全身耳に君を待つ冬木立
子を抱きてぐるりと回す春の風
かけつこはいつも二番春の坂

虫倉蝉音
甲羅干す亀に惚れられ残る鴨
本堂の屋根に失敬鳥交る
亀鳴くを待ちて真鯉の大欠伸

むつみ
花衣すべてカードと人知らず
春の闇赤外線はお見通し
残雪を見せて儲けるバスツァー

村上美和
手袋をはづして祈りゐる女
手のひらの集つてくる暖炉かな
裸木のもつれ合うたり離れたり

百千草
雑煮餅父は人生語るかな
蛸壷も住めば都よ冬の月
曾孫の笑むまで待たう初写真

森岡香代子
春のうつ地球を回す更年期
気合入れペダルをふみこみ春の朝
大寒の風呂や耳までつかりいる

森 要
初夢は孫から貰うお年玉
新しき年の挨拶旧い顔
喜ぶか七十七の計かさね

八木 健
新インフルのワクチン余り春隣
御降や兄の着古し譲り受け
分校のオルガンギイギイ春が来た

柳澤京子
鼻先に白のおしつこ寒雀
着ぶくれて飲料水は酒酒と
春疾風渦巻く物体パンツ落つ

山内重昭
薬喰終へて十種のクスリ飲み
枕絵に更けて埋み火かきおこし
春の風邪こじれて長き嫁舅

山下正純
色白の差し歯間に合ふ笑ひ初め
間に合つてよかつた差し歯初笑ひ
心内こそにぞ新芽去年今年

山本あかね
雪女郎観覧車より降りて来る
スピーチの順がすぐそこ海鼠噛む
おくどさんまだ健在や避寒宿

山本けい子
インフルや年玉貰ひそこねたる
寒の灸念仏唱へゐる母へ
何ごとも受ける覚悟の初化粧

山本 賜
天満宮に遊びをり子雀ら
四月馬鹿動物園にイソップ橋
野菜市バケツに黄水仙の束

横山喜三郎
聴けぬふり保身の術やちやんちやんこ
願ひごと外れし絵馬や山笑ふ
地球儀を回し見てをり大相撲

吉田恵子
異常気象三寒四温乱したる
二八の二を睨みつつ帳簿つけ
逆さ梅ゆらしていけの主の恋

渡辺さだを
ステッキが三つ目の影日脚伸ぶ
吊されし己がコートの矍鑠と
不景気の豆撒き鬼をめつたうち

渡邊美代子
駆け足で黒猫が行く霜の朝
ぽつこりと馬穴の氷抜けにけり
薄紅梅ふつくらと帯締めてみる