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山ノ内杜士子 (やまのうち としこ)
1 胃の中の薬のとける二月尽 2 天の川男女ふたりの間柄
3 ケーブルカー花野の上をすれちがふ 4 うしろ向きに降りる階段秋深む
5 人待ちのつま先落葉集めゐる 6 病む兄に言葉をさがす秋の雨
7 新妻の白きエプロン秋の朝 8 宍道湖に映る二つの秋日傘
9 雑煮食ふロスアンゼルスの娘の卓で 10 スケートの君とつなぐ手力ゐる
11 風引きや異国の町をさまよへる 12 ファスナーの行つたり来たり春浅し
13 春の雪病名告白される身に 14 花冷えや形見の服の新しく
15 会話など不要のふたり夏木立 16 喪主の声炎天の庭に響きけり
17 指先に残る逢瀬の花吹雪 18 故郷や東西南北蝉時雨
19 空港の灯のまつすぐに秋の暮 20 自転車の君は今朝より夏帽子
21 グラス持つカウンターが好き秋の夜 22 トラックの尻が割り込み夾竹桃
23 縁談を断りに行く梅雨の駅 24 西瓜喰ふ引越しの荷に腰掛けて
25 恋猫に自動扉が開かない 26 春の海さざなみの向きそろうなり
27 ハングライダー音なく着地秋の浜 28 さよならの握手やはらか卒業す
29 うつ伏せに乳房をつぶす春愁 30 新緑のベンチ貸切状態の
31 小さき嘘一つ転がし柿若葉 32 吾娘の住む異国につづく春の海
33 この道はくねくね曲がる草紅葉 34 大声を上げ雪・雪・雪と叫ぶ
35 母の日や母の好みのカレー煮る 36 夏帽子風にとられてラスベカス
37 ロス空港のジヤンボ機濡らす初時雨 38 ポケットに貝の音して夏の浜
39 入社式胸の名札の楷書文字 40 ひと待ちのかぞへていくつ凌霄花
41 シクラメン買ふひと目惚れしてしまひ 42 恋ふひとを鬼に見立てて豆を撒く
43 人生も手編みの棒もひと目づつ 44 孫の手の熟柿にとどく肩ぐるま
45 日焼け止めたつぷり塗つて恋女房 46 夏布団とりあつてゐる帰省の子
47 飾らないところが好きよ沢桔梗 48 しつけ糸一気に抜いて花衣
49 おもひきり笑つてみせる初鏡 50 啓蟄や一歩前へと出る勇気



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