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もう泳ぐことはない波をみてゐる |
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どの薔薇も嗅いでみたくてここはパリ |
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太陽が月が立ち寄る蜜柑山 |
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子が母にうつ天瓜粉立ちのぼる |
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大根を目利きのやうに選びけり |
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ルノアルの豊頬紅し初暦 |
7 |
熱っぽく初富士のこと語りけり |
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日に出せばにこにこにこと福寿草 |
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掛け軸の読めぬ字を読む旅はじめ |
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大真面目不真面目みんな葱坊主 |
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初黄蝶七六ホーン渋谷駅 |
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すみれ草ここは八里のどのあたり |
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春風やへんなわたしが目を覚ます |
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毀れさうなものに子猫と幸福と |
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吹き溜まるさくらさくらの色のまま |
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春眠の時をりしやんとする背筋 |
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暖かや麒麟の首のすべり台 |
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百舌鳥坐れ坐れと石がある |
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王冠を編んで頭上にクローバー |
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薔薇の芽や私の中に躁と鬱 |
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かう跳んで御覧なさいと蛙跳ぶ |
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柔らかし若葉の中に棘の木も |
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母の日のごろりとなれる家族かな |
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縄跳びがいきなり出来て風薫る |
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雑巾を初夏のバケツに遊ばせる |
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六月の花嫁健康さうな肩 |
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雨蛙呼ばれたやうに控へ居る |
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蜥蜴出てかなりの距離を走りけり |
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脱いだ靴うしろに投げて夏の川 |
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ふるさとのすばやさ蟹は紅ぞ |
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舟虫をびっくりさせてしまひけり |
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げに赤く河馬の目光る暑さかな |
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日傘ごとメアリーポピンズ駅に消ゆ |
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ひまでひまで芍薬爆発したくなる |
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玄関に髪切虫の一夜かな |
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羽抜鶏ついてゆくのも羽抜鶏 |
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やもりゐる昔話のやうにゐる |
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踏みさうになりし蹊蜥のみどりかな |
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東京の月も綺麗と返信す |
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秋風や砂場にひとつ砂の山 |
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草の花憶良の草もまじりけり |
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猪の帰つた裏山かがよへり |
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行く秋の落とし子みたいな雲だなあ |
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この辺り恋文横丁冬日和 |
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寒すずめ人工芝につまづけり |
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トラックがもの言う寒さ曲がります |
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遊ぶ虫寝る虫死ぬ虫花八つ手 |
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景品の醤油重たし十二月 |
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おもしろいやうに売れてる蒸饅頭 |
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年の暮同じ速度の回り寿司 |
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