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山本けい子 (やまもと けいこ)
1 朝市のすずなり鬼灯かかへこむ 2 自然薯やそえ木を当てて届きたる
3 塩もみに手頃な茄子の届きけり 4 図鑑広げるとんぼうの迷ひ込み
5 母さんが何かをきざむ春厨 6 山吹の大束朝のバスに乗る
7 風荒れてほうたる草の根にひそむ 8 生き残り標本となる夏茜
9 研ぎべりの光る包丁河豚を挽く 10 秋の日のすとんと沈む日本海
11 冬の薔薇散るその香をほどきつつ 12 里山の裾を彩り櫨紅葉
13 みぞおちに汗の流るる墓掃除 14 蜻蛉の警戒しつつ我が指に
15 廃屋をしばり上げたる蔦かづら 16 七輪をはみ出してゐる秋刀魚かな
17 火星大接近の虫しぐれ 18 竹ぼうき庭のつららを破壊せる
19 親が子に手順教へて初詣 20 風の吹かぬに山茶花の散る気配
21 こここに喚声花吹雪舞ふたびに 22 足をおく位置にとまどひいぬふぐり
23 五月雨や剥製獣の目の光る 24 石垣に吹く野路菊の最敬礼
25 玉子酒一気に呷り酒嫌ひ  26 冴返るなり五臓六腑の検査
27 存分に食べ粕汁の息を吐く 28 木瓜の花散らすつもりかこの雨は
29 新樹光鳩の求愛成り立たず 30 ごきぶりも私も慌てふためゐて
31 酔客の足を止めをり虫の声 32 辞書開き今日の白露の意味を読む
33 山ごばう抱へる服を染めにけり 34 今日も又やり込めらるる温め酒
35 天高しビル解体の音止めば 36 大根やその青首を陽に晒す
37 目高の子ルーペの中に収まらず 38 叔父さんが叩いて西瓜の熟れぐあひ
39 じやんけんに負け石焼芋買ひに 40 節分の転んだ床の堅さかな
41 擦り切れてをりお遍路の膝の地図 42 御仏の耳朶のふつくら鳥曇
43 新しい自転車よろよろ子どもの日 44 触れんとすれば種弾けるねこじやらし
45 帰省子に掻き回されて盆休み 46 骨切りの包丁確か鱧料理
47 南天の花打つ雨の容赦なく 48 さくら目掛けて車椅子登り切る
49 散る直前の赤色となり木瓜の花 50 十薬を切る強き香をおそれつつ



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