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人間はことごとく敵子猫咬む |
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お引越スミレは移植鏝に載り |
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逃水は神のお洩らしかも知れぬ |
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春の田の空は燕に所有権 |
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怠けぐせ治らず春の海のたり |
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頬杖の何本も要る春愁 |
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村いちばんの美人も彼岸墓の中 |
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引力の平等藤の房垂れる |
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新宿区渋谷区千代田区みな春めく |
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丸めても畳むと言へり花筵 |
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風の兄弟長男が春一番 |
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少年のゆびに撃たるる揚雲雀 |
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ジャンケンの三椏どれもチョキを出し |
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幾何学が好きで三椏やつてます |
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声のほか糞も降らせる百千鳥 |
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肘張つてこの池を出ずあめんぼう |
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うなぎ焼く栄養の音滴らせ |
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一匹の蚊にストーカーされてゐる |
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飯食つて行方不明の帰省の子 |
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野原大学音楽学科草笛奏法研究生 |
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雲の峰芯のあたりは固からむ |
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漂へる電気くらげに部品かな |
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薫風と言ふべし厩舎から吹くも |
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カレー派と寿司派で揉める子どもの日 |
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窮屈をものともせずに紙魚の恋 |
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尺蠖やメートル法の世を生きる |
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蝉殻をぬぎつつあればセミヌード |
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みづからを死体遺棄して油蝉 |
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肩の蠅家来のやうについて来し |
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アイロンをかけハンカチの過去を消す |
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人声に聞き耳を立て水芭蕉 |
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文字通り丘を引きずる蚯蚓かな |
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横笛の首たてに振る秋祭 |
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秋田小町コシヒカラセて稲を刈る |
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威銃村いちばんの空威張り |
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チルドレンとは冷凍会社の阿波踊 |
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秋刀魚の解剖お箸のメス揮ひ |
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秋天をいけどるやうに投網打つ |
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西瓜撲殺豪華客船の上甲板 |
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切り分けし西瓜の塔に種の窓 |
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人間を蹴る馬のゐて天高し |
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野分晴音にするならあつけらかん |
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紅葉且つ散る樹木にもながら族 |
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相談をうけて夜長を使ひきる |
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串の字は象形文字よおでん食ぶ |
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モーグルといへど潜らぬスキー板 |
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大根を地球と奪ひあつてゐる |
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一刀両断大根のふくらはぎ |
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しまひにはからまれてゐる初電話 |
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嫁が君里帰りしてそれつきり |
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