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渡辺さだを (わたなべ さだを)
1 初旅の蟹大皿に畏まる 2 ごまめ噛む顳?疾く齢かな
3 養生の葛湯に咽喉を焦がしけり 4 妻慣れて手品師のごと毛糸編む
5 嚏して顰蹙を買ふシンフォニー 6 ビフテキにナイフが軋む利休の忌
7 リラ冷の民宿浴衣寸足らず 8 珈琲の匙もてあそぶ土ぐもり
9 啓蟄の忍者いづくに潜みしか 10 木の芽風法被の車夫もイケメンに
11 ピカソ画は目を三角に四月馬鹿 12 霊園に遊山がてらの花見かな
13 カプセルの薬彩どる遊蝶花 14 妻紅きエプロン着けし蝶の昼
15 紫陽花に見惚れて話あいまいに 16 出目金の目玉とびだす薄暑かな
17 玉葱を?ぐ目の潤む厨かな 18 酔ふほどにお国訛りや冷奴
19 夏着にも女するどき品定め 20 団地にも慣れ向日葵の大柄に
21 操短の工場はあへぐ草いきれ 22 妊婦服目立つや木槿咲く頃は
23 西行庵そこよそこよと道をしへ 24 デゴイチの吐く息粗し百日紅
25 星とびてディナーざわめく摩天楼 26 鳴くちちろ神將闇に目を剥きて
27 検診にさらす胸裸の秋暑し 28 バーベキュー夜の闇焦がす星月夜
29 糶箱の蛸這ひ出でて秋暑し 30 老いてなほ胸のときめき花芙蓉
31 洗ひものベランダの月濡らしけり 32 勢子の手に鹿潔く目をつむる
33 黄落の母校白亜が目に沁みる 34 赤とんぼ邪馬台国何処にや
35 垂れ耳の洋犬ばかり冬日向 36 数珠を繰る堂まで匂ふ大根焚き
37 リハビリの杖忘れたる冬日和 38 パレットの絵の具目覚す冬紅葉
39 白髪かくれ顔若がへる冬帽子 40 よろめきてナースと踊るクリスマス
41 天国へ疾く招んでほし星まつり 42 ネクタイの水玉こぼる梅雨入かな
43 余り苗大学出ても出前持ち 44 九ちやんの口笛流る銀河かな
45 安堵して仔猫が昼寝ケアハウス 46 夕薄暑ぶつかけうどん舌なじみ
47 田草取りふぐりが泥を浴びるぞよ 48 大夕焼妻も童の頬になり
49 バラ抱くママの笑みには棘があり 50 議員らが角突き合はす甲虫



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