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金魚そちらからこちらどう見える |
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せまい家尺取虫の測量す |
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おはやうと思はず口に昼寝覚 |
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紫陽花に見とれて寺の名を忘れ |
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己が影引き摺り駆ける羽抜鳥 |
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芥子坊主うすうす髭の生えてをり |
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雨蛙枝にもどれば枝色 |
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なめくぢに家捨てしかとかたつむり |
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魂の案内するかに蛍とぶ |
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あるじ何処蛇の衣の風に揺れ |
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土用波次々ゴールしてをりぬ |
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万緑の山の兎の緑色 |
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嘘つきの星は海月にされにけり |
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合鍵でしじま開きし月下美人 |
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どうしても鳥にはなれぬ飛魚よ |
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肘張りて今日もお出ましがまがへる |
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水の風滝の壷より吹き上がり |
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ごきぶりや往きも帰りも振り向きし |
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風のない火の見櫓に鯉幟 |
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炎天に耳の奥まで空つぽなり |
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風鈴市通りを音の風 |
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でで虫の同じ所をひとまはり |
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短夜の手枕猫にかしてやり |
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夕焼けに屋根歩む猫桃色に |
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紙芝居なり窓を過ぐ秋の雲 |
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秋うらら鉛筆削りからからと |
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稲光四方の山々引き寄せる |
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顔を出す鬼の子親を捜すかに |
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割り箸の足を好まぬ茄子の馬 |
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かまきりの顔の角々目玉あり |
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稲妻に目を剥いてゐる鬼瓦 |
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夜も更け居残る虫や蝿叩き |
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犬の影怪獣になる良夜かな |
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石段を上がればトンボの空のあり |
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すすき原すすめどすすめどすすき原 |
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啄木鳥や木々を回りて品定め |
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嫁に行く狐にあげる蔓珠沙華 |
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ころころと猫のころがり小六月 |
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雪兎しまひ忘れて透き通り |
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葉の耳に何を聞くらむ雪うさぎ |
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煮凝に白き目玉のありにけり |
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手毬唄お経なのかと孫の問ふ |
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重箱にごまめの目玉残りけり |
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七福のなくて七くせ笑ひ顔 |
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初場所に尻もちつきし行司をり |
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白狐化粧しなほす初稲荷 |
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なまはげの来るのを待つはお母さん |
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いろいろの音する水の春なれば |
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菜畑の子らも黄色の声あげし |
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さくら咲き奥の細道ふさぎけり |
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