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田中章子 (たなか あやこ)
1 金魚そちらからこちらどう見える 2 せまい家尺取虫の測量す
3 おはやうと思はず口に昼寝覚 4 紫陽花に見とれて寺の名を忘れ
5 己が影引き摺り駆ける羽抜鳥 6 芥子坊主うすうす髭の生えてをり
7 雨蛙枝にもどれば枝色 8 なめくぢに家捨てしかとかたつむり
9 魂の案内するかに蛍とぶ 10 あるじ何処蛇の衣の風に揺れ
11 土用波次々ゴールしてをりぬ 12 万緑の山の兎の緑色
13 嘘つきの星は海月にされにけり 14 合鍵でしじま開きし月下美人
15 どうしても鳥にはなれぬ飛魚よ 16 肘張りて今日もお出ましがまがへる
17 水の風滝の壷より吹き上がり 18 ごきぶりや往きも帰りも振り向きし
19 風のない火の見櫓に鯉幟 20 炎天に耳の奥まで空つぽなり
21 風鈴市通りを音の風 22 でで虫の同じ所をひとまはり
23 短夜の手枕猫にかしてやり 24 夕焼けに屋根歩む猫桃色に
25 紙芝居なり窓を過ぐ秋の雲 26 秋うらら鉛筆削りからからと
27 稲光四方の山々引き寄せる 28 顔を出す鬼の子親を捜すかに
29 割り箸の足を好まぬ茄子の馬 30 かまきりの顔の角々目玉あり
31 稲妻に目を剥いてゐる鬼瓦 32 夜も更け居残る虫や蝿叩き
33 犬の影怪獣になる良夜かな 34 石段を上がればトンボの空のあり
35 すすき原すすめどすすめどすすき原 36 啄木鳥や木々を回りて品定め
37 嫁に行く狐にあげる蔓珠沙華 38 ころころと猫のころがり小六月
39 雪兎しまひ忘れて透き通り 40 葉の耳に何を聞くらむ雪うさぎ
41 煮凝に白き目玉のありにけり 42 手毬唄お経なのかと孫の問ふ
43 重箱にごまめの目玉残りけり 44 七福のなくて七くせ笑ひ顔
45 初場所に尻もちつきし行司をり 46 白狐化粧しなほす初稲荷
47 なまはげの来るのを待つはお母さん 48 いろいろの音する水の春なれば
49 菜畑の子らも黄色の声あげし 50 さくら咲き奥の細道ふさぎけり



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