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1 |
すらすらと書いて悔あり初日記 |
2 |
一行に託す一年初日記 |
3 |
定年の日数を記し初日記 |
4 |
水平線突き破り来し初日の出 |
5 |
幸せな人のうしろに初詣 |
6 |
満面の笑みで上がりし絵双六 |
7 |
すべからく内緒の話女正月 |
8 |
猫に飯催促されて女正月 |
9 |
妻よりも先に座りし初鏡 |
10 |
ふらここの背中を押して恋敵 |
11 |
朧夜や何故か遺書めく遺言書 |
12 |
春立つや自動改札潜る犬 |
13 |
銅像に一礼をして卒業す |
14 |
最後まで突っ張り通し卒業す |
15 |
ほどほどに生きてほどほど豆の花 |
16 |
肩書きの取れてごきぶり追ひ回す |
17 |
やけくそで走り抜けたる油虫 |
18 |
善人のままで逝きたし合歓の花 |
19 |
あっさりと大往生や合歓の花 |
20 |
罪深き人にも射して新樹光 |
21 |
神官に祓はれてゐし青嵐 |
22 |
香水に思はず会釈してしまふ |
23 |
違ふこと考へてゐる端居かな |
24 |
居候三日目の猫梅雨はげし |
25 |
とことんに筋を通してかき氷 |
26 |
きっかけは二人で食べたかき氷 |
27 |
不細工なものを選びて西瓜買ふ |
28 |
金魚にも一言かけて旅に出る |
29 |
前うしろどこが正面金魚鉢 |
30 |
背中より合掌されて生身魂 |
31 |
しばらくは他人の私サングラス |
32 |
呼鈴の音に一癖帰省の子 |
33 |
鶏頭の十四五本といふ半端 |
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秋刀魚焼くとき我輩は猫である |
35 |
銀漢やちょいと恋してみたくなり |
36 |
かの人を単語登録秋桜 |
37 |
御仏の偏平足や酔芙蓉 |
38 |
筒抜けの噂話や松手入 |
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そっぽ向く子にも祓ひて七五三 |
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なんとなく妻に空似の古案山子 |
41 |
割り勘の端数を払ふ師走かな |
42 |
懐手して割り勘を遣り過ごす |
43 |
奥の手は出さず仕舞いや懐手 |
44 |
跡継ぎの引導渡し懐手 |
45 |
ためらはず冬薔薇を剪る修道女 |
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毛糸編むことに徹して地獄耳 |
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予備校に特待生や冴返る |
48 |
予備校の門に檄文冴返る |
49 |
はじめてのみくじ大吉冴返る |
50 |
病室の白き天井冴返る |
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