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永島唯男 (ながしま ただお)
1 糸口のまだ見つからず初明かり 2 急ぐひと急がぬひとも年新た
3 歯に衣を着せてものいふお元旦 4 屠蘇祝ふ貧乏揺すり咎めらる
5 をみなとて微醺を帯びて交はす賀詞 6 大小を問はれ中とや嫁が君
7 一年の計も立たざる二日の夜 8 両親に逸れ嬉しや玉せせり
9 知恵の輪に遊ばれてゐる松の内 10 隻眼の達磨とんどの火だるまに
11 初午の美形に眉を読まれたる 12 土手青む音痴の父に音痴の子
13 少年の猫を被りて雛の客 14 地団駄を踏めば踏む程地虫出づ
15 人間(じんかん)の時間短し沈丁花 16 鳥雲に入るを見てゐる風見鶏
17 ドーナツの穴のみ残すピクニック 18 肘鉄をまともに喰ふはなの下
19 春灯朱唇の嘘は美しき 20 おぼろ夜の女河童は甲羅脱ぐ
21 揚げてより棹に纏はるこいのぼり 22 祭笛神馬は脚も尾も白し
23 熟寝覚むさて何をせむ行々子 24 半夏生鏡の前に誰も居づ
25 胸許に鉄砲百合を突きつける 26 ハンカチに照れ畳みこむ膝の上
27 納得をしてとくとくとくと注ぐビール 28 行摺りのひと夜を狂ふ火取虫
29 広げたる大風呂敷の夏座敷 30 くだらないことをいうてる水中り
31 死せる振りして叱られし生身魂 32 孤独より大勢が好き曼殊沙華
33 揚足をとられまいとて案山子立つ 34 騙し絵に騙され釣瓶落しにも
35 月今宵ふと邪なこと過ぎる 36 据膳の角に躓く新走
37 相寄らば燈火親しむことはせず 38 身に沁むや悪気はなきと云はれしが
39 穴まどひ胡散臭しと引き返す 40 文化の日とどのつまりは呑むことに
41 奥の手を見せぬ漢の懐手 42 過ちを犯さぬ人も頬かむり
43 福耳にメガネマスクとイヤリング 44 飴玉のやうにとろける日向ぼこ
45 忘られぬこと胸に秘め年忘れ 46 餅を焼く妻何故の膨れ面
47 屁理屈を捏ねて並べる置炬燵 48 己が躬をはなれて光る木の葉髪
49 蹤けてくる疫病神も悴かめり 50 寝て起きて飯に厠に年つまる



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