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小杉隆 (こすぎ たかし)
1 三越の買物袋に春大根 2 ヴィーナスの短衣(トウニカ)煽る春一番
3 受験子に馬鹿貝食はせてはならぬ 4 割烹着妻に強いたる昭和の日
5 ロボットに膝を奪はれ恋の猫 6 扶余三山大和へ吹きし涅槃西風
7 黄塵や雄叫び迫る嘉峪関 8 若き日の夢陽炎うて神保町
9 寄り添ふてなほ片袖は春雨に 10 去勢などもつてのほかと恋の猫
11 夏の来て死ぬほど読みし健康本 12 銭湯に背中ずらりと親父の日
13 夏大根細身が好きと女子高生 14 右五銭左姉の手宵祭
15 団扇絵と口吸ひしまま寝入りけり 16 豪気なる面が金魚に餌与ふ
17 子一匙母一匙のかき氷 18 バタフライ胸に抱きこむ太平洋
19 鼻つまむサインに汗の甲子園 20 臍の出を待つは雷公のみならず
21 砂漠抜け麦の秋へと絹の道 22 羅や天山北路の風に舞ひ
23 真つ直ぐの道しかなくて麦の秋 24 夕立やあの喫茶店いまはない
25 諍ひは剪るの剪らぬの萎えし百合 26 水色のとんぼと遊ぶアルテミス
27 行きとんぼ帰りもとんぼまたとんぼ 28 降りて来よ月が奪ひしかぐや姫
29 お点前の身振りで植うるさつまいも 30 艪の軋む音のみあつて星月夜
31 藷掘つて子無きを語る友の肩 32 直線を引けぬ老技師鰯雲
33 括られて名残りの菊の売屋かな 34 鉢巻に赤い羽根さす若棟梁
35 ほおと言ふ顔の見上る紅葉かな 36 尼寺の狸の仕掛け二つ三つ
37 碁敵に似し顔買ひぬ達磨市 38 病室を忍び出て来て夜鳴きそば
39 われこそと首抜きん出す青大根 40 黒塗りのベンツの農夫頬被
41 消炭のまた仄あかく古希の恋 42 あてもなくバスにふらりと三ケ日
43 懐に木枯詰めて古書の市 44 春着縫ふ君がまつ毛の翳りかな
45 バスゆれて口紅はみ出す年の暮 46 鉛筆の削る音して夜鳴そば
47 納豆を練つて哲学語る人 48 裏木戸に雪三寸の売屋かな
49 強面の漢は狆の嚏かな 50



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