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笠 政人 (かさ まさと)
1 酒呑みの父の遺影に戎飴 2 嫌いやと水溶性の紙ひひな
3 冬眠を半ばに熊の徘徊す 4 春時雨団塊世代ち些(ち)と休め
5 蛍雪の歌はうたはず卒業す 6 剃刀に首をあづける目借時
7 少子化の路地恋猫の横行す 8 大陸の煙害まとひくる黄砂
9 でで虫のふとふり返る紆余の道 10 蚊のいのち殺めぬための蚊帳を吊る
11 ワーキングプアーとは謂ひ得たり啄木忌 12 クロスワードに耕す脳や梅雨籠り
13 初売りのスイカ触診免がるる 14 ふる里の獏と親しむ昼寝かな
15 特攻と称へし自爆黄金虫 16 八月来殺人劇は見たくない
17 呪ひにとろんと潤みとんぼの眼 18 電線の雀の学校秋深し
19 大阪の茹で上りたる夏の月 20 夕茜おんぶばつたの子守歌
21 捨てきれぬ天動説や鰯雲 22 啄木鳥や下山の膝がわらひ出す
23 雀らの発生練習霜の朝 24 白頭をかくす余徳の冬帽子
25 百までは生かされさうな納豆汁 26 鯛焼きの尾にかぶりつく卑怯者
27 長き夜を句練り句練りついつか夢 28 偽の字の烙印押され年逝けり
29 絶滅危惧種直筆の年賀状 30 シャボン玉一つが天に召されけり
31 蹴とばして追ひかけ春の松ぼくり 32 干し竿の満艦飾や風光る
33 堅香子やイナバウアーの花の舞 34 ケータイの音が割込み花筏
35 紙風船吹いて又つくひいふうみ 36 遍路寺おぼろ饅頭のやうな月
37 蛍烏賊うらみの目玉歯に詰まる 38 食糧自給できぬ国土の穀雨かな
39 亀鳴くや寝間衣のボタン掛けちがひ 40 春の夜眠たげ似鳴る古時計
41 戻り梅雨明けの宣言反故となる 42 覚えなき脛の古傷半ズボン
43 胡瓜もみ想ひ出せない父のこゑ 44 白桃をむきて青春遠ざかる
45 手花火の玉落つるまで太る業 46 地下街に造り滝あり人を待つ
47 石仏の灼けても絶えぬ慈悲の笑み 48 牛の背を鴉の扇ぐ日の盛り
49 大旱のダム湖に忽と村役場 50 花茣蓙のうへ大の字の小天地



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