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今城夏枝 (いまじょう なつえ)
1 もう少しここにをりたし雪達磨 2 一年の計を忘れて雑煮食ふ
3 筍や皮を脱ぎつつ天目指す 4 九重連山引き連れて春の雲
5 掃除機や節分の豆を食べ集め 6 母さんを目で追ひかける入学児
7 よぢ登る百足柱を撫でてゐる 8 団扇風恋仇より貰ひける
9 はじめての空を掻きゐる油蝉 10 あきらめのぐつぐつ煮える鮟鱇鍋
11 あきらめのぐつぐつ煮える鮟鱇鍋 12 彼岸花咲く彼岸を待ちきれず
13 木枯に背中を押され走り出す 14 枯蟷螂宇宙のどこか睨みゐる
15 春の花売るおしやべりを続けゐて 16 放課後のふらここ退屈してをりぬ
17 春落葉なぜか私について来し 18 春の雨五七五と降りゐたる
19 三月のいそいそと来て離れけり 20 大根や膚のあらはに横たはる
21 つくしんぼ地上恋しと頭出す 22 東風風に飛ばされさうよ恋の句も
23 春の夢ゴツホの糸杉動き出す 24 春疾風きのふのわたし逃げてゆく
25 三月やお先に失礼して行きし 26 低音でささやき暗闇のひひなたち
27 わたくしの部屋を素通り春の風 28 句材みなずぶ濡れとなり春の雨
29 背のびして海をながめるつくしんぼ 30 しやぼん玉ぶつかりあつてさわぎだす
31 大空を背負ひ得意の奴凧 32 食道をむりやり通過春キャベツ
33 好きですと打ちあけられる四月馬鹿 34 ゆつくりと葉つぱ脱がせる柏餅
35 抱擁の解かれてをりぬ春の山 36 焼かれゐる目刺憤怒のまなこして
37 笑ふやうに空に飛び出すしやぼん玉 38 花ごとに神の宿りし白木蓮
39 包丁に試し切りされ春大根 40 春愁の扉を開けて煙草吸ふ
41 入学の子のランドセル歩き出す 42 豌豆のころころ笑ひ床転ぶ
43 食べごろと睨まれてゐるまくわ瓜 44 空蝉にしがみつかれし小枝かな
45 押入れに体突つ込み冬仕度 46 噂話も肩寄せてゐる寒さかな
47 桜困惑仰がれ見つめられ 48 小回りがきかぬ大向日葵となり
49 寄せ鍋の煮え講釈も煮えたぎる 50 枯薄風の吹くまま野に泳ぐ



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