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皺一つ無きシャボン玉若いわね |
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皸の手と握手して帰京せり |
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曖昧を形にすれば心太 |
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儚しの字の中に夢帰り花 |
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六月の水溶性の恋心 |
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老い二人風鈴吊るす大仕事 |
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陽炎へ手を上げている測量士 |
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誘惑といふ香水の副作用 |
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平仮名で「びーる」と書けば生ぬるし |
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父の日のちよつとしくじる子の手品 |
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葱の香が一直線にやって来た |
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内緒だよ柿が夕日を食べていた |
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点点点水引の赤点点点 |
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大胆に臆病に着る水着かな |
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草笛の少年天と交信す |
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人それを些細といふや金魚の死 |
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尻向けて嘘言っている焚火かな |
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少しだけ月に近づく肩車 |
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詩も恋もみなふらここで生まれたの |
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子蟷螂草から生まれ出たやうな |
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告白の後もふらここ揺れやまず |
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刻まれて刻まれてなお鱧である |
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空蝉にまだ残りたる視線かな |
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九割が命の重さ糸蜻蛉 |
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寒卵支点力点作用点 |
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掛算の子足し算の子柿簾 |
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何ですか今日のビールの口実は |
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遠足の声のかたまり過ぎゆきぬ |
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鰯雲天は平面かと思ふ |
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一年生蝶のごとくに下校する |
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ラムネ瓶振れば昔の音がする |
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メルヘンを丸あるく詰めてシャボン玉 |
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マイバッグはみ出している葱の白 |
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ボケが居りツッコミが居て日向ぼこ |
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ビルまでも隠す手品や霾れり |
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ビートルズ愛した奴も木の葉髪 |
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とんとんとんとんとんとんと春キャベツ |
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ちやん付けで呼ばれることも盆帰省 |
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ソーダ水泡がドキドキしています |
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ストローの先からが空シャボン玉 |
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サングラスかけて一人の陰作る |
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サッチャンはもう幸子です入学す |
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サーファーが北斎の波待ってをり |
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こんなにも空碧き日が原爆忌 |
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こだはりの岩塩振るや貝割菜 |
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彼もまた元サユリストおでん酒 |
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おむすびもハンバーガーも文化の日 |
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エレベーター香水だけが乗つてゐた |
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海神(わだつみ)にサザンを聴かせ海開き |
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あかぎれを知っていますかそこの君 |
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「漲れ!」と黒板にあり卒業す |
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