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彦阪義久 (ひこさか よしひさ)
1 皺一つ無きシャボン玉若いわね 2 皸の手と握手して帰京せり
3 曖昧を形にすれば心太 4 儚しの字の中に夢帰り花
5 六月の水溶性の恋心 6 老い二人風鈴吊るす大仕事
7 陽炎へ手を上げている測量士 8 誘惑といふ香水の副作用
9 平仮名で「びーる」と書けば生ぬるし 10 父の日のちよつとしくじる子の手品
11 葱の香が一直線にやって来た 12 内緒だよ柿が夕日を食べていた
13 点点点水引の赤点点点 14 大胆に臆病に着る水着かな
15 草笛の少年天と交信す 16 人それを些細といふや金魚の死
17 尻向けて嘘言っている焚火かな 18 少しだけ月に近づく肩車
19 詩も恋もみなふらここで生まれたの 20 子蟷螂草から生まれ出たやうな
21 告白の後もふらここ揺れやまず 22 刻まれて刻まれてなお鱧である
23 空蝉にまだ残りたる視線かな 24 九割が命の重さ糸蜻蛉
25 寒卵支点力点作用点 26 掛算の子足し算の子柿簾
27 何ですか今日のビールの口実は 28 遠足の声のかたまり過ぎゆきぬ
29 鰯雲天は平面かと思ふ 30 一年生蝶のごとくに下校する
31 ラムネ瓶振れば昔の音がする 32 メルヘンを丸あるく詰めてシャボン玉
33 マイバッグはみ出している葱の白 34 ボケが居りツッコミが居て日向ぼこ
35 ビルまでも隠す手品や霾れり 36 ビートルズ愛した奴も木の葉髪
37 とんとんとんとんとんとんと春キャベツ 38 ちやん付けで呼ばれることも盆帰省
39 ソーダ水泡がドキドキしています 40 ストローの先からが空シャボン玉
41 サングラスかけて一人の陰作る 42 サッチャンはもう幸子です入学す
43 サーファーが北斎の波待ってをり 44 こんなにも空碧き日が原爆忌
45 こだはりの岩塩振るや貝割菜 46 彼もまた元サユリストおでん酒
47 おむすびもハンバーガーも文化の日 48 エレベーター香水だけが乗つてゐた
49 海神(わだつみ)にサザンを聴かせ海開き 50 あかぎれを知っていますかそこの君
51 「漲れ!」と黒板にあり卒業す



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