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冴返るがん病院に喫煙所 |
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三月や黙契のごと道路掘り |
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山焼きの火を放ちしは消防夫 |
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四月馬鹿メガネを探すめがねかな |
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春一番髪うすきにも容赦なし |
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春寒の思はず影の吾による |
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新参のかたまつてゆく昼餉かな |
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杉の花街に怪しき人溢れ |
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見栄切つて電線にあり奴凧 |
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万愚節写楽となりて髭を剃る |
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御手植のヒマラヤスギや鴉の巣 |
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子供の日檻のライオン寝てばかり |
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灯を消して睡れずにゐる吾と蚊 |
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日曜のあしたの金魚寝てゐたり |
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更衣首を合わせば腕長し |
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太陽を並べて暑し予報官 |
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青鷺や見られゐること知る歩み |
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青大将先に行かせておもむろに |
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バス停のボールの日陰すら恃み |
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日雷ややんちゃの一つもしてみたく |
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柏餅ひとつでよすかまま二つ |
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いつもながら最初難し氷宇治 |
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はためいてくしやくしやになる「氷」かな |
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片陰へわが影よれば吾もよる |
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油照廊下を行きて戻り来し |
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夕凪や馬鹿貝の脚のぬつといで |
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翡翠の失敗ダイブ見てしまふ |
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かはほりの空のあまたの曲がり角 |
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枕木に小石犇く残暑かな |
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老人はみな河馬の口秋の暮 |
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大西瓜非破壊検査して見せる |
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名月や寄り来て火星赤らめる |
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しわぶきの刻のありけりコンサート |
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銀行を襲ひしひともマスクとや |
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人間の貌は立体マスクかな |
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凹みたるわが身もろとも布団干す |
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三寒のときに四温を省きたる |
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手袋の不器用を手のもてあます |
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片方は売らぬ手袋またなくす |
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焼芋を犬より守る子は必死 |
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大根ほどの子が大根を持ちたがり |
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大根も足も見えをり厨口 |
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冬休ざしきわらしが二日ほど |
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けふよりの冬帽いきなり置き忘る |
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忘年会席はとつくに決まりをり |
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天辺に生りしばかりに木守柿 |
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梟のときをりまなこ裏返す |
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元旦も目覚まし時計鳴りにけり |
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福引の五等のティシュ当たりにけり |
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油照廊下を行きて戻り来し |
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