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原田曄 (はらだ あきら)
1 冴返るがん病院に喫煙所 2 三月や黙契のごと道路掘り
3 山焼きの火を放ちしは消防夫 4 四月馬鹿メガネを探すめがねかな
5 春一番髪うすきにも容赦なし 6 春寒の思はず影の吾による
7 新参のかたまつてゆく昼餉かな 8 杉の花街に怪しき人溢れ
9 見栄切つて電線にあり奴凧 10 万愚節写楽となりて髭を剃る
11 御手植のヒマラヤスギや鴉の巣 12 子供の日檻のライオン寝てばかり
13 灯を消して睡れずにゐる吾と蚊 14 日曜のあしたの金魚寝てゐたり
15 更衣首を合わせば腕長し 16 太陽を並べて暑し予報官
17 青鷺や見られゐること知る歩み 18 青大将先に行かせておもむろに
19 バス停のボールの日陰すら恃み 20 日雷ややんちゃの一つもしてみたく
21 柏餅ひとつでよすかまま二つ 22 いつもながら最初難し氷宇治
23 はためいてくしやくしやになる「氷」かな 24 片陰へわが影よれば吾もよる
25 油照廊下を行きて戻り来し 26 夕凪や馬鹿貝の脚のぬつといで
27 翡翠の失敗ダイブ見てしまふ 28 かはほりの空のあまたの曲がり角
29 枕木に小石犇く残暑かな 30 老人はみな河馬の口秋の暮
31 大西瓜非破壊検査して見せる 32 名月や寄り来て火星赤らめる
33 しわぶきの刻のありけりコンサート 34 銀行を襲ひしひともマスクとや
35 人間の貌は立体マスクかな 36 凹みたるわが身もろとも布団干す
37 三寒のときに四温を省きたる 38 手袋の不器用を手のもてあます
39 片方は売らぬ手袋またなくす 40 焼芋を犬より守る子は必死
41 大根ほどの子が大根を持ちたがり 42 大根も足も見えをり厨口
43 冬休ざしきわらしが二日ほど 44 けふよりの冬帽いきなり置き忘る
45 忘年会席はとつくに決まりをり 46 天辺に生りしばかりに木守柿
47 梟のときをりまなこ裏返す 48 元旦も目覚まし時計鳴りにけり
49 福引の五等のティシュ当たりにけり 50 油照廊下を行きて戻り来し



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