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藤岡蒼樹 (ふじおか そうじゅ)
1 繋留の潜水艦や浮人形 2 蛍火や貨車の通過の遠汽笛
3 フリーター鶏冠白けの羽抜鶏 4 鋳造の湯口の注ぎ大西日
5 谷に捨つ錆ぶ洗濯機木下闇 6 花火ひらく産地霜降り偽装肉
7 夏暁や賞味期限の回収車 8 下痢嘔吐生もの中り水中り
9 食ひだおれ人形売らるる日の盛り 10 夏痩やパンに挟みのハム薄き
11 夜濯や根石設ふ潜水夫 12 吊り床を祖父の設へ沖の波
13 吊り床や島を往き来の浜に波 14 遠き船笛磯松のハンモック
15 吊り床や新兵時代の艦語り 16 蝮焼酎化膿消毒の常備薬
17 麦焼酎父の名素焼徳利詰め 18 父の日の水割りよひをもてあます
19 模型軌道伸ばし驕児(きょうじ)や明易し 20 風入や芳名の書に去り難き
21 猫を呼ぶ網戸の内の昼寝覚 22 炎昼や学期終ふ日の喋る帰途
23 日当の初の手弁当夏休み 24 夏休みなき校塔の大時計
25 蝉時雨耳栓しての首の風 26 遠雷や熔接棒の減る光
27 蝉消ゆる重量運搬車の峠 28 炎天や内陸地震の断層地
29 内陸の断層軋み蟻地獄 30 点滴を遮(さえ)ぎる西日や白カーテン
31 甚平の漢二の足二の手の毛 32 甚平や職人気質の見え隠れ
33 炎天や銀胴機体の深空魚 34 盆帰省蛸の刺身に蛸膾
35 夏の口ねばねば唾液間がな抜く 36 早苗饗や姪る娘むこ連れて
37 兼用をステッキにもす夕立かな 38 茄子漬淡白夕餉の胃にこなれ
39 島隔つる帰省に小魚膾かな 40 月日隔つる帰省雁木の弁慶蟹
41 往きもどる踊る娘の柳腰 42 新妻に変装踊りの齢びと
43 変装のマニキュアひかる盆踊 44 やぐらの灯顔に手拭ひ踊りの輪
45 盆踊齢手馴れに足運び 46 踊りの輪老齢乗せる足運び
47 番傘に絞り地声の盆音頭 48 へのへのに銀紙案山子反射せり
49 掃苔の隅の骨壷歳の罅 50 清貧に叛(そむ)き糖尿黙の汗



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