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初夢や夢が力となることも |
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美しい日本の言葉御慶述ぶ |
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鳴り出して皆とり出す初電話 |
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へたうまのいも版が出来年賀状 |
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浪花へと二月礼者となる赴任 |
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靴墨のまだやや硬き余寒かな |
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橋の名になじみも増えて淀の春 |
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自転車の荷台を狙ふ春の風 |
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窓辺ではあくびが春を待つてをり |
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あくる日は跡形もなき春の雪 |
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くぐりゆく八百八橋春の水 |
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風吹けば風に従ふ落花かな |
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春の宵ぱつと明るくなる花屋 |
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完璧主義で心配性の春愁ひ |
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子猫寄る愛情少し分けてやる |
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鼻濁音上手くなりたり杉の花 |
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初蝶がホームページを飛んでゆく |
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井の中を楽しんでゐる蛙かな |
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この店にとんと御無沙汰夏のれん |
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紫陽花をさっと挿したるジョッキ大 |
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紫陽花の中に子猫の顔のあり |
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梅雨最中疲れやすいに丸つける |
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釣堀やまたもあいつと鉢合せ |
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エレガントに消えてゆく猫木下闇 |
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雨あがりすぐまた出来し蟻の道 |
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うな重を護岸工事のやうに食べ |
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ビール酌むややこしいことかなわんわ |
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単身寮裸同士のすれ違ふ |
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聴講の合間に開く扇かな |
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思い切り今日一日を日焼して |
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飼犬が目覚め飼主また昼寝 |
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炎天下脳を鍛へてゐるつもり |
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雨傘が日傘呑気と呟きぬ |
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朝顔の鉢の重さとすれ違ふ |
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蜻蛉の眼に映り居る世紀末 |
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長き夜やはたと気がつく勘ちがひ |
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考へぬこともまた知恵秋の空 |
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日曜の下り快速初紅葉 |
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天高し綿をちぎつたやうな雲 |
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驚きて立ち上がる猫木の実落つ |
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恥かくも一つ成長運動会 |
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言ふなれば日本の車窓稲の波 |
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秋深むまだ遊びたき子供達 |
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東京に星の見えない冬の空 |
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おもむろにマスクはみ出す大あくび |
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スクラムや息の白きがかたまりぬ |
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マイペース守れぬ定め年の暮 |
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居酒屋の格子師走の世を隔て |
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年忘れそれだけならず物忘れ |
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ポケットに仕舞ひ込んでも悴む手 |
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